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映画バカ一代 第4夜 フェデリコ・フェリーニ『女の都』、愛すべきナポリの男女観――追いかけられる愛、追いかける愛、気の強い女性と、めんどくさがりな男性――

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  南野 尚紀 

 イタリアに来てから、フェデリコ・フェリーニの『女の都』という隠れた名作のことをよく思い出す。
 あの映画は、バスを降りた挙句、マルチェッロ・マストロヤンニが演じる道に迷った男は、「香水の匂いは嫌いだ」という不思議な魅力を持つ女性の道案内により、森の中にある、女性が集う館に入るんだけど、そこがまた複雑な人間関係のある館で、最終的に、いろんな女性に会って対話し、その森から出るという内容だ。
 マストロヤンニが演じる男が、ドイツ人の看護師と熱い一夜を過ごすことを思い出したあとすぐに、森から抜け出すシーンが終盤にはあるが、実際あの映画の重要な問題は、追いかける愛と、追いかけられる愛、そしてその実、今日偶然、知り合いに聞いた、ナポリ人に特有の男女関係の問題と関係があるように思う。
 あのひとを追いかけていたつもりが、いつのまにかあのひとを追い越して、あのひとに追いかけられている。あのひとに追いかけられ、仕掛けられた恋愛だったはずが、いつのまにかこっちが夢中になっていた。
 僕は時々、女性と関わる時こういうことを思うことがあって、リードする、されるももちろん重要だけど、それと同じくらい重要だと思ってる。
 「あたしのありのままを見てほしい」なんていう女のひとは、よくいるけど、それでもあのひとはああいうタイプだっていう、文学的に言えば、類型でひとを見てるってことにもなるけど、その両方がない恋愛ほどつまんないものはない。
 なぜなら、それがないということは、右も左もわからない街を歩いているのと同じで、そのひとのことをまるでわかっていないで恋愛してるのと同じだからだ。
 結局、最初にバスを降りた時、マストロヤンニが出会った女性は、マストロヤンニを好きで、自分のことを理解してほしかったし、マストロヤンニも好きだから理解したいというところはあったんだろう。
 追いかける恋愛って不思議だなぁって思うのは、その奥義は、追いかけた挙句、感情に急ブレーキかけて「あんな女!」と思った素振りを感情込めてやると、女性が振り向くことはよくあるからだ。
 ナポリの男女関係に関していえば、今日、女性の友達から聞いた話によると、ナポリの男は陽気で、会話が大好きだけど、仕事をしたくないってひとは割にいるみたいで、その反面、女性は気が強い女性が多いとされているくらい、女性が解放され、天井を突き破る勢いがある女性が強い国・イタリアなのに、ナポリはその中でも、とてつもなく気が強い女性が多く、かわいい男のためならドイツに出稼ぎに行ってお金を獲ってきてやるかなってくらい、気が強いらしい。
 フィウニチーノっていう空港がある街から、ローマに入る時、運転手とイタリアンシネマ『ナポリ狂想曲』の話で盛り上がった。
 ソフィア・ローレンっていうキレイな女優が出ている映画。
 あの旅芸人も、「なんで俺の芸人の仕事は、仕事だって誰も認めないんだ」って嘆いているシーンが終盤にある。
 そんなこともあって、ローマもいいけど、ナポリ住みたいなぁってずっと思ってる。
 南イタリアだから、とても熱いし、保守的な側面もあり、その土地をみんなが好きすぎるゆえに、海外のひとが住むのにはやや厳しい面もあるらしい。
 それでも住みたいなぁナポリ、デジタルノマドでも結婚でもなんでも、絶対ビザは勝ち取るから。
 それでもその実、ローマ人のような古き良き美学、フィレンツェの映画『踊れ! トスカーナ』や、ダンテの『神曲』のような最高の結婚観、そして、ナポリの女性のような気が強く、保守的で、愛すべきひとを愛する女性。
 そんな女性と結婚できたらなぁって思うけど、どうかな笑
 ひとが英雄やモデルであり続けるためには、存在論における時代との決闘が必要で、心の安らぎのためには、生活への行動、そしてひとへの言葉の投げかけが必要だ、みたいなことはさっきインスタに投稿したけど、三十四歳で、結婚も急ぎかなって思うと、少しは燃え上がるよ。
 今夜は、イレネ・バジェホっていうスペインの作家の『PAPYRUS』っていう、ダンテ『神曲』と双璧を成す大作を英語で読むことにする。
 イレネの作品、好きなのに、つい彼女の顔が見られるインスタばかり見てしまうし、仕事もあるから。

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                                了 

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