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Dangerous tonight――結婚の理想にまつわる美人伝――

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南野 一紀 

 ひとは生まれた土地であるとか、周囲の人間関係だったりとか、自分の生まれもった個性だったりとか、家庭の経済状況とか、金銭感覚とか、時代とか、仕事とか、さまざまな要素との関係の中で生きてるから、実際、ほとんど自由なんてあったもんじゃないし、その実、自由を手にしたひとは、自由でないひとの目線を気にしなくてはいけないというのも世の常だし、存在論の奥義は、そのひとがなぜその境遇にいて、自分はそのことを知り得て、何かを考えたのだろうという問いにはなるが、結婚というのは、その結晶であるともいえるし、逆をいえば、自分の意思で相手を拒否も受け入れもできる唯一の自由なのかもしれないと思う。

 僕が理想とする結婚観は、今まで見てきた偉人、美人、知り合いのだれにも当てはまることのない自分だけの結婚を達成すること。

 結婚観の基本としては、尊敬でき、憧れる要素が強いひとで、それは自分のこだわりを持っている部分に関してだといいし、心も容姿も美人であるということも前提だけど、それ以上に自分が好きな人間が共通してるということ、そして、一緒にいて安心できて、かつディスカッションが正直にでき、お互いの個性を尊重できた上で、夫婦喧嘩も平気で勃発させることができる気の強さ、気概のある女性がいいということだ。

 それでいて、お互いに自然でいられるし、どこかあの女、時々、夫にも挑発的な態度で挑む傲慢さがあって、時に喧嘩腰で皮肉なのか強気なのかあの態度、しかもそういう態度を自分以外にはたまにしか見せないみたいなそんな女性は最高だなぁってことで、それのオプションで、誘惑とか、同情を買わせるような言葉をいったりするっていうのも、文学をやってる自分にとっては悪くない要素だったりする。

 国会答弁とか見てると、物言いは正直だし、そもそも正直に決断しないといけないのが政治の世界だから、多少の駆け引きや現実があっても、やはり強気でものはいう。それを前近代的、つまり大人のやることじゃないといったりするひとがいるけど、僕ははっきりものをいいつつ、多少の駆け引きもする人間を大人だと考えているから、あんまりそういうことをいうひととは相容れないなぁって強く思う。

 もっといえば、僕は古代ギリシャとか、ルネサンス時期のイタリアは好きだから、前近代だろうがなんだろうが困ることないだろうし、機械文明の力なんかない方が絶対いいと思ってるくらいだし、それ自体よくわからない理論だと思ってる。ディズニーアニメでよくあるプリンス・プリンセス物語の批判なんか、それのもっともたるで、近代以後の世界のことや、結婚のシステム、社会構造、物語論を含む文学理論、果ては、女性がどうっていうことでなんかいうひともいて、あの批判に何か信憑性のあることをいったひとは見たことない。フェミニズムでも、それを好きだというひともいるし、それしか信じてないひともいるし、だれと結婚しようがひとの勝手だから。

 古代ギリシャには、ピュグマリオンっていう彫刻家もいて、理想の女性の彫刻ばっかり掘っていたら、突然、その女性が現れたっていう神話もあるし。

 ナポレオン・ボナパルト。

 ロマン主義だけでなく、いろんな芸術の潮流を呼び起こし、それだけでなく、政治、軍事においても、大きな功績を残したひとであるが、結婚においては、ジョセフィーヌという、いい女性であるんだろうし、後妻のマリ・ルイーズもいい女性だったんだろう、結婚は彼の自由だけど、クレオパトラやエレクトラや坂井泉水のような絶世の美人じゃなくてよかったのかなぁっては思う。

 ジョセフィーヌはいい男を見守る力や社交性は非常に長けていたけど、ひとの自信を削ぐようなところがあったのかなぁ、謙虚さがないとか、ぶりっ子してないっていうとダメだったらしくて、後妻のマリ・ルイーズは、結果出した瞬間だけは、ナポレオンを認めたけど、エルバ島に行ったあと、他の男とどっかに行くような女性でもあった。

 僕は結果を出してる時だけしかひとを認められないひと、そして逆に結果を出してない時だけしかひとを認められないひととは結婚したくないから、結果や過程でなく、もっと大きい視点で自分を見てくれるひとと結婚したい。

 ダンテは、作品では無名のまま死んでいったベアトリーチェという女性、どうも女性を愛する女性だったとされているし、結婚もベアトリーチェとは似ていないひとと結婚したそうだ。

 ダンテはいいひとだけど、彼の作品の中では、エレクトラもクレオパトラも地獄にいるし、結婚観は平和的だったのだろうという気がする。もちろん、『帝政論』では、「エレクトラをローマの祖のようなひとだ」とほめたそうだけど、それはまた別のことと考えていたんだろう。

 中世とか近代は、そういう複雑さのもとに人の世の中があった。

 その点、ボッティチェリはイケメンだったし、女性観も最高だったし、古代にも現代にも似たようなパターンというのはある。

 古代ローマの英雄・マルクス・アウレリウス・アントニウスは、クレオパトラと結婚し、偉大な功績を残したことで知られるが、彼は軍人としても優れていて、クレオパトラと出会ってからというもの、華々しい戦勝を重ねた。

 クレオパトラの映画のエッセイは、以前書いたから、ぜひ読んでいただきたいんだけど、その映画では、クレオパトラはアントニウスを自分の身勝手な理由で何回も暗殺しようとするし、アントニウスが寝起きに名前を間違えただけで、部屋のツボやイスを破壊しまくるし、軍の指揮もとっちゃうし、結果、ローマには連れて行ってもらっちゃうんだけど、最後の話は史実ではない。

 僕が知りたいのはギリシャ系だったとされるクレオパトラが、アントニウスをリードしていたのか、アントニウスがリードしていたのかという話で、お互いにだった可能性もあるが、大きく捉えたときにどんな関係だったかが知りたいとは思う。

 現代でいえば、ポルトガルのサッカー選手・クリスチャーノ・ロナウドと、ジョルジョーナ・ロドリゲスの結婚。

 もちろん、このふたり、サッカー選手としてもすごいし、モデルとしても最高だけど、何がいいって、年下の女性のジョルジョーナがクリスチャーノを支えつつ、どこか女性としての魅力でクリスチャーノを助けて、少しだけ優位に立っているように見える部分で、あれは理想の結婚だよな!

 かくいう僕も、勝手に世間から悪いって決めつけられてるけど、その実、最高以外のなにものでもない年上の美人と結婚したいっていう気持ちはあるし、それがクレオパトラのような女性で、その女性をリードできる部分があったら、かなり申し分ないと思う。

 僕は別にリードされても、受け手に回ってもいいかなぁって思うタイプだけど、世間はそれを嫌がるから、それはやめとくかとか思ってる。第一、これは割と多くの女性の味方をする女性を敵に回しがちだから。

 ふつうに話している時も、寝ている時も、理想そのままだからずっと見てたいなぁみたいな振る舞いを僕の感情を察してやってくれる女性ってたまにいるんだけど、それでも攻めれば攻めたでうれしいって顔するからなぁ。あんまり弱みを見せない女性が心からよろこんでる顔見るのは、やっぱり好きだし。

 僕の理想の結婚観はそんな感じ。

 実際、かなりハードルが高いことをいっているようだけど、離婚でもしない限り、結婚は一人しかできないし、基本は筋打ちって決まってるから、一人って決めれば可能性はなきにしもあらず。

 僕の理想は、父親がものすごく理想のひとだったが、どっかにいってしまったであるとか、そんな理由で父親を愛してるが、なぜか暴力的なひと、それでいて、お姉さん気質なひとはいいと思ってる。

 坂井泉水は最高だし、お姉さん気質なところもあったけど、妹肌な側面もあったから、WANDSの上杉昇、TUBEの前田亘輝とは同じ事務所で関わりがあったし、前田は葬式にも来てた。

 Laufayやにこるんは、そもそも年下気質なひとだけど、どこか強烈な父性への愛を感じて、そこがいい。

 そんなわけで、結婚とはおよそ関係のない英雄伝のエッセイだけど、スペインの作家・イレネ・バジェホの『PAPYRUS』を、夜にでも翻訳しようと思う。

 こんな偉大な作家、今まで見たことないから。

了 

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