南野 尚紀
時々、僕は人形だったんじゃないかと感じる時がある。
人には買ってもらえないくらい大きく、一応、キレイだとしてくれる人もいる人形。
もっとキレイになりたい。
あの子のために。
人形は女の人が遊ぶためだけにいて、いつもどこか遠くを見てる。
昔、東ヨーロッパのアニメを見て、アヴァンギャルド芸術に憧れたことがあった。
意味を追い求めすぎて、だれにも相手にされないピアニストの演奏のようなアート。
キレイだけど、不気味じゃない、あれ。
もっとキレイになりたい。
夜。
ひどい孤独を抱えた女の子の祈りや、怨念が乗り移って、息を吹き返す。
ずっと部屋の中にいても、あの子には違う世界を見せてもらえるから、あの子と一緒にいたい。
人を寄せつけないくらいのキレイさに価値はあるのだろうか。
それでも心が美を求める。
なにかが乗り移ったように。
好きな女性の意思だけを反映させて動く人形。
自分の意思や自由が不愉快に感じる。
キットゼンセデモユメミテタ、アナタノタメダケノニンギョウ、ピノッキオノヨウニ、ウソヲツクトオンナノコニアイテニサレナクナルニンギョウ、ソレダケデ見てもらえなくナルニンギョウ、シンジツダケヲアイシテクダサイ、オンナノヒトヲアイシテクダサイ。
こういう想いに守られてると感じる時、ひどく幸せを感じる。
ドール。
それは空っぽのようで、念の塊。
了
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