南野 尚紀
イスタンブールには、単に旅行で来ただけじゃなくて、オルハン・パムクの無垢の博物館に行きたいとか、本屋とか図書館がどんな感じか知りたくて来たのもある。
イスタンブールは個人経営の3畳間くらいの本屋はよくあって、絵を売ってるついでに、本も売ってるお店もあるんだけど、トルコ語はわからないから、絵を買った。
この本屋には、『Kafuka』っていうタイトルのビデオとかもおいてあったりしたし、お店の人に「アートが好きなんですか?」って聴いたら、「フリーダ・カーロが好き」って言ってて、なんだかよさそうな女の人だなって、いい気分。
そこそこ大きな本屋は、パソコンの画面が割れたから行ってみた、イスタンブールのアップルショップのある大きな建物に入ってたから、ついでに見てみた。
本屋にはダンテも村上春樹もあったけど、意外だったのは、本屋のランキングの1位が川上弘美の本だったことだ。
川上弘美はイスタンブールで人気があるのか、と予想外の事実に触れながら、イタリアでもそうだったけど、文学でもエンタメ要素があって気軽にも読める本が売れてるのかなってことに最近、思い至ってる。
僕も文学作品としてエッセイを書いてるけど、それでも読んで気分がた楽しくなったり、精神的な成熟を目指す人の助けになったりするようなエッセイを目指してるので、ピントはそんなに外れてないのかなと、少し自信になった。
それにしてもダンテの表紙の絵は、なんでこんな絵なんだろう。
裸の巨人が男2人を掴もうとしてる絵は、なんかダンテの本の表紙じゃないみたいだと思った。
無垢の博物館は、イスタンブールのアンティーク街にある。
古着とか、古い映画のポスターとか、カップとかが売ってる店が並んでる街を通って、無垢の博物館に着く。
その日は9月中旬だったのに、30度もあって、ガイドの隆子さんと「クーラー効いててラッキーだったね」とか、「帰りは坂、大変でそうですね」とか、「帰りはカフェ寄りながら、ゆっくり坂、登ってきますか」とか話してた。
無垢の博物館は、オルハン・パムクとどういう関係の人なのかはわからないけど、物語を語り聞かせてた女性が住んでた家らしく、その家を無垢の博物館として改装して残したらしい。
オルハン・パムクは蒐集するのが好きらしくて、女性のハイヒールとか、人物の切手とか、タバコの吸い殻とか、蝶の髪飾りとか、ジオラマとかいろんなものが飾ってあった。
説明によると、オルハン・パムクは小説を書く際に、こういったのものを見ながら小説を書いてたそうだ。
僕は頭に残ってる経験とか、考えとかを思い起こして書くことしかないから、旅行してこんなのがあったなとか、そういうのをモチーフにすることはあっても、ここまで視覚的な表現にこだわらないから、すごいなと。
特にオルハン・パムクの小説のすごさは、高尚な思想性と物語の構築能力が両立してるところにあって、哲学や報道の勉強だけじゃなくて、具体的なものや都市の観察眼が優れてる人でもあるんだろう、と思い、僕もたまには都市観察しようと決めた。
ただ僕は僕のエッセイの観念的なところは気に入ってるから、ほどよく女性とか音楽とかねことかファションとか街とか、ブレンドしながら、書いてこうとは思ってるけど。
このあと、隆子さんとアタテュルク図書館に行った。
清潔でスタイリッシュ。仕事や勉強をする人のために、コンセントも完備されてるいい図書館。
正面の窓からは海が一望できて、こんなキレイな図書館なかなか見ない。
図書館を出たあと、カフェでレモンジュースを飲む。
「トルコはヨーロッパへの入国が厳しくて、ほとんどの人が入れないんですよ」とか、「ケニアに行った時、サファリに行ったんだけど、ライオン同士が噛み合ってて、ライオンが血をダラダラ流してるの見て、迫力あった」とか、隆子さんからはいろんな話を聞いた。
Massimo DuttiっていうZARAの会社がやってるZARAよりもランクが1つ上の店があるって聞いたので、今度行こうとも思ったし、僕はZARAが大好きなので今から行くのが楽しみだ。
フィレンツェのドゥオーモの近くにもあるので、フィレンツェに戻ったら行きたい。
8時半にクルーズ船に乗り込んで、チキンカレーパイ、チキングリルをウイスキーを飲みながら、食べた。
いろんなダンスが披露されてたけど、ベリーダンスは最高。
妖艶な美女がセクシーな格好をして、腰を揺らして踊ってるんだけど、そのダンスがキレイすぎて、ドキドキした。
ダンスが終わってしばらくしたあと、船の入り口のところに上がって、ソファーにベリーダンサーの女性が座ってたので、「一緒に写真を撮りたい」って言ったら、ボロボロ泣いてて、「気分が悪い」って言ってて、「なんで?」って聞いたら、「自分でもなんでなのかわからないけど、気分が悪い」って言ってて、あんなに美人が大泣きしてるの初めて見たから、こっちの心はドギマギだ。
最後に「バイバイ」って手を振ったら、うれしそうに手を振ってたからよかったけど、相当なにかあったんだなと思った。
多分、隆子さんのことも、ベリーダンスの女性のことも、一生忘れない。
そのくらい幸せなひとときだったし、隆子さんはほんとにいい人というのももちろんだけど、今夜、ベリーダンサーの見せた涙は宝石のようにキレイで、「あんなキレイな女性を大泣きさせた男は、許せない」という気持ちとともに、僕の心をやさしく誘うから。
了
オルハン・パムク 無垢の博物館
https://www.masumiyetmuzesi.org
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