南野 尚紀
1.本論
「嫉妬」には、主人公が、なぜ男と別れたのかは書かれていなかったけど、理由はわかる気がする。
男はインテリジェンスのある学者肌の女性で、かつ理想の女性と結婚したかったのだろう。
ヒロインも文学などの学問に親しみが深かったけど、街の教会である男が、旧約聖書の詩篇の一編を読みながら、十字になって仰向けになって寝ているのを見て、私の辛さもこの男のものほどじゃないだろうと感じるシーンは決定的だ。
彼女の見る幻想は、紛れもなく男が囚われていたものであっただろうし、さらに言えば、付き合ってる女性に関係のある幻想だっただろう。
ヒロインが素晴らしいのは、本人の意図ではなかったかもしれないが、男や付き合ってる彼女の辛さを理解しようと努めたところである。
もちろん、付き合ってる学者の女性も男も、ヒロインのことを考えていたかもしれない。それでももう男とは関係のない、ましてや学者の女性とも関係のない彼女がそのことに想いを巡らせて、苦しみが消えないでほしいと願うその姿は、徳の高い女性と言わざるを得ないだろう。
僕はヒロインみたいな女性が好きだが、やはり学者肌の女性みたいな女性が好きなのだとも思ってしまう。
詳細なんか書いてないのに、なぜ?
詳細は書かなくても、伝統や神話の物語をたどり、類推するとわかることも多いからだ。
ヒロインだけでなく、アニー・エルノーもまた、神様に近い人物だったのだろう。
それでも、「ローマ人への手紙」のように、「みずからを知者であると、おごり高ぶってならない」という姿勢や、生活、あるいは天上界での生活への想いの強さにより、自分を神様に近い存在だとは書かないのだろう。
学者肌の女性が、作品中でどうなのかは知らないし、現実にあったことを作品にさせてるようなので、実際にいる人のようだけど、彼女は人に対しては毅然とした態度で、倫理や美学の問題に臨むと思う。
みずからが神に近いとは言わずに、言葉や態度で示すだろうし。
僕は3年前の冬に終わったある恋について想いを巡らせながら、この本を読んだし、しばらくは考えると思う。
仁美さんという、とてもキレイな女性との恋についてだ。
彼女と別れたきっかけは、彼女が文学の話にそこまで乗り気じゃなかったことにもあるし、世の中の法則を知ることに、僕の好きなZARDの坂井泉水やシンボルスカほどは熱心じゃなかった部分にもあると思える。
新宿のオペラシティで行われた川内倫子という写真家の展覧会に行こうと話した時に、キレイだねと展覧会の広告を見ていたら、1枚だけ、裸になった体に蚊がたくさん張り付いてる模型を撮った写真を見て、あんまりキレイじゃないからやめたいと言いはじめたし、ビルボードライブ東京でも、アル・ディ・メオラのギターの演奏に関する僕の話をあまり聴きたくない様子でもあった。
僕は彼女との結婚もいいと今でも思うし、できれば彼女にも少し似てる、ZARDの坂井泉水やシンボルスカにも似てる人と結婚したいと思う。
それにしても、2歳の頃からずっとZARDの坂井泉水の夢を見て、一生見続けるんだなと思うと、しあわせだなと感じる。
そんなことを受け入れてくれるのは、存在論的な理由があって、Firenze人生まれた彼らの中の善良な人か、敢えてFirenzeに住みたいと思い、Firenzeに住んだ人くらいだろう。
家賃の関係や海があるからという理由で、Pisaに住むけど、Firenzeには何回でも行きたい。
Caterinaも坂井泉水に似てるけど、医者として関わりたいって言ってたから、どうなのかなぁ。
彼女のこと、本当に好きなんだけどなぁ。
2.作者紹介
アニー・エルノーは、1940年生まれ、フランス出身の作家。
ルーアン大学、ボルドー大学で学び、高校、中学、遠隔教育センターで教鞭を執る。
2022年ノーベル賞を受賞。
アニー・エルノー賞も設立された。
3.あらすじ
フランスに住んでいるヒロインは、男と別れたが、他の女性と付き合っている彼と時々、会い続けている。
彼と会うと、どうしても彼の今の彼女のことが気になり、ずっとその女性のことをネットで調べてしまう彼女。
次第に、彼女と彼への嫉妬の感情が膨らんでいき、街ですれ違う女性に、彼が付き合ってる女性の影を追い求めてしまう。
彼から彼女がとある大学の教員であることを知り、ネットなどでの詮索をやめられない彼女だったが、ある日、シンポジウムでヒロインが登壇して話すと、明らかに彼の付き合ってる彼女だと思える人が、列席していた。
その女性とは会話をすることはできなかったが、そのあと、街を歩いている時に入った教会で、十字になり床に仰向けになり、寝ている男が旧約聖書の詩篇を朗読しているのを見て、ヒロインは、私の辛さも彼ほどではないだろうと考える。
ヒロインは、ついに彼の邪魔をしないことだけが、今の自分にできることだ、と考え、彼に「もう会いたくない」という内容の手紙を送り、その後、数回会い、彼とは会わなくなる。
最後、ヒロインは、自分が別の場所にいる人間の中にも存在したということを彼女は知ることもないんだろう、と考えて話は終わる。
4.参考文献
アニー・エルノー 『嫉妬・事件』 ハヤカワP文庫
了
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