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女性を愛する者同士の連帯、神の国に近い夜、イタリアで仁美さんと会える日はいつなのか

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南野 尚紀 

 韓国の女性作家・ハン・ガンが、ノーベル文学賞を受賞した夜、イタリア人女性で日本語を勉強してる女性に「フェミニストとダンテは何の関係がありますか?」、「フェミニストは成熟してないですか?」と聞かれた。
 そのことよりも、横須賀のポートマーケットの横を通って、公園に出るまでの道を歩いてから帰った後、部屋で聴いていたセルシオ・メンデスの「Night and Day」を聴きながら、思い出したことがあり、そのことが気にかかって仕方がない。
 トラック以外ほとんど通らない大通り、遠くに見える海、北九州行きフェリーの看板、夜もともりつづける街灯、さっきホテルのフロントで見たにこるんに似ている疲れた顔の女性、イタリア、トルコでの楽しい日々、それらをのぞいては、ここ1年はあまりにわけのわからない不幸が多い。
 普遍の法則を発見をすることや、輝かしいことを感じることよりも、あの女性と話した時に感じる安らぎを感じることの方が本当は重要だ。
 ヒッピーのような生活に憧れた。愛と平和、表現と政治、ヨーロッパ思想だけでない別の世界(もちろん、それは単なる嗜みとしても限界になりつつあるが)、無機物と関わらないで生きるオーガニックな生活、フィレンツェの街にそびえる首を持ったペルセウスの銅像。彼女に会うための約束。
 ハン・ガンは、韓国、韓国のフェミニズムなど、ヨーロッパから見た時に多くの意味で、難しい問題を抱えた状況で作家活動をし、独自の作品を書き上げた。
 僕が読んだのは、『ギリシャ語の時間』という作品で、長すぎたのですべては読めなかったけど、確か、ギリシャ語の授業をやっている女性教師が、それに参加する1人の男性に女性の辛さ、素晴らしさを理解してもらおうとするんだけど、彼はそれから逃げようとしてしまうといった、だいたいの内容だった気がする。
 僕も最近は、男性はバカが多すぎるから、女性が教育すべきだと思うことがよくあり、その教師が倫理的、美学的にすぐれていることこそが世の中のほとんどすべてだとも思うし、ダンテの『La Divina Commedia』も実際はそうだった。
「この苦境がもし、あなたの持つ善性を敵視する世の中の人間などが持つ多くの悪性に由来してるとしても、あなたがもしここで逃げたら、あなたの善性や女性への愛はその程度のものとみなされるでしょう。女性を愛する者同士の連帯というのは、それだけ重いものなのです。価値がある故に、敵視され、重くなってしまっている」
「昼の輝きは健康的で、それでいてどこか嘘に見える。あれだけ勇敢さや、力や、倫理を追い求めても、追い求めれば、追い求めるほど昼の光が嘘に見える。夜が神の国みたいに、光って見えるのはなぜなんだろう。こんなにも暗くあたたかい夜。あなたに会ったあの日から、遠ざかるほど地獄の苦しみを味わうと、アニー・エルノーの『シンプルな情熱』には書かれていたけど、僕の方が仁美さんを待った。邂逅も矢のように過ぎ去ったし。それでも夜に仁美さんのことを想うと、想いの彼方まで夜は光に満ちて、あたたかい感じがする。次、会うのはイタリアでかもな。ZARDの坂井泉水にも、仁美さんにも似ただれかに会えるのは」
「無駄な苦しみや汚いものや悪を背景にしない方がキレイに成り立つ、美や善。それに耐えるのもきっと最後の時。ウクライナ、イスラエルが勝利すれば、悪は根絶やしにされ、神の国に近いヨーロッパが訪れるでしょう。それでも神の国は遠い。私たちは類推することしか、伝令を送ることしかできない。それでも類推や伝令を送ることをやめてはいけない。夜に考えることをやめてはいけない。それが神々と女性を愛する者の掟だから」

 

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