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評論 太宰治 『ろまん灯籠』 ロマン主義の本質と容姿と年齢

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南野 尚紀 

1. イントロデュース

 太宰治が文学においてこだわったのは、理想の女性、女性らしい美を追求する女性との関係性だ。

 太宰治が嫌いという作家もよくいるし、日本においても海外においても太宰治の評価は、実力に比して高くない。

 堀辰雄以上にヨーロッパ人の持つ気質がある彼だが、世間への気遣いゆえに、彼は誤解され、自殺にまで追い込まれた。

 今回取り上げる「ろまん灯籠」は、グリム童話の「ラプンツェル」をベースにしていて、この作品はディズニーアニメとしても有名だが、彼もまたディズニー同様、古典作品をアレンジしている。

 勢いのある筆致、淀みのない言葉、日本語として無理のない洗練されたヨーロッパ風の言葉、そして、秘められた女性への情熱。

 ジャズスタンダードナンバーのアレンジのように、煌めいている「ろまん灯籠」。

 ラプンツェルや王子様の中に内在する存在論的な物語、その本質を描き出した太宰治は日本文学の誇りだし、日本では中上健次の次に素晴らしい作家なのだろう。

2. 作者紹介

 一九〇九年生まれ。青森県出身。大地主の九番目の子供として育つ。本名は津島修治。東大仏文科中退。

 自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながら、第二次世界大戦前から戦後にかけて、次々と作品を発表。代表作に『走れメロス』、『津軽』、『ヴィヨンの妻』、『斜陽』、『人間失格』などがある。坂口安吾や織田作之助などの作家とともに新戯作派や無頼派と称された。一九四三年に山崎富栄と玉川上水で入水自殺し、生涯を閉じる。

3. あらすじ

 芸術に造詣の深い一家が、ある日、病弱な末弟が祖父に認められたいという一心から書きはじめた小説をみんなでリレーで書いていく。

 長兄は正義感、責任感が強く、文章にも非倫理的なことが書けない人。

 次女は恋愛好きで、アクティヴで、肺が強く、ギリシャ古典が好きな人。

 このように、エピソードを通じて家族の様子が描かれていく。

 小説内で書かれる小説はぎグリム童話の「ラプンツェル」をみんなでアレンジしたもの。

 魔女に育てられたラプンツェルは、狩に出かけて森を彷徨っていた王子様と出会う。

 その後、ラプンツェルは王子様と会ったことがきっかけになって、魔女により、塔に幽閉されてしまうが、長い髪の毛を地面まで下ろすことで、王子様と再会し、塔を脱出する。

 魔女に育てられたため、粗野な振る舞いをしてしまう自分や、身分の違いに悩むラプンツェルだが、ある日、容姿に関する重大な問題に直面してしまう。

 魔女から魔女の娘は、歳を取ると醜い容姿になることが告げられる。

 それでも結婚を決断するラプンツェルと王子様。

 それを見て、魔女は料理がまに娘を突き落として、容姿を醜くされてしまおうとするが、失敗に終わる。

 2人はそののち、永遠の愛を誓うのだった。

 その小説を書き上げ、家族で朗読を聴いたのちに、末弟を看病した母親に祖父がメダルをあげるという幕切れになっている。

4. 本論

 本小説で描かれる作品内に登場するラプンツェルと、王子様の内面というはあまり複雑には描かれていないし、実際、それだけを考えると、どんな背景のある人物なのかというのが想像ができない部分もある。

 だが、こう考えることも可能だ。

 作品内の小説を書いた人物、その中でも特に長兄と次女と末弟の性格や状況というのは、大きく王子様と関係があるという推測ができる。

 というのも、この物語を考える上で、なぜ太宰治が複数の人間にこの小説を書かせたのか、登場人物が小説をリレーのようにして書くというのが主な内容なのに、なぜあんなに細かく人物を描いたのかという問題が出てくるからだ。

 要するに、「ろまん灯籠」は『御伽草子』で描かれた数々の古典のアレンジ同様に、古典をアレンジした部分だけでも成立するから、それを書いた人物を描くことの意味がないとおかしいことになってくる。

 つまり小説を書いた人物と王子様とラプンツェルがなんらかの関係がないと、おかしいことになってくるのだ。

 長兄の性格の正義感や責任感が強い性格、次女の恋に対する情熱が強く、アクティブでギリシャの古典が好き、末弟の病気がちだが、認められたいという気持ちが強い、執筆に対する意欲が長兄や次女並み以上だということは、ポイントだろう。

 要するに、「ラプンツェル」をアレンジした部分と、書いた人物の中でもこの3人の性格がそのまま関係があるということになる。

 王子様が好きになった相手なので、当然、ラプンツェルも関係があるだろう。

 小説内小説を考える上で重要なポイントは、ラプンツェルの親が魔女になっているところで、魔女の家で育ったことで、粗野になったこと、王子様との身分の違いに悩んでいること、それ以上に重要なことは、後半部分で描かれる歳を取ると、容姿が魔女のように醜くなることがよくあり、それに関して、悩むところだ。

 これに関して、王子様は彼女の純真さを愛したがゆえに、容姿が衰えても結婚するという決断を下す。

 実際に魔女に料理がまに突き落とされて、容姿が醜くなるはずだったラプンツェルがそのままの姿で出てくる。

 突き落とされた時に、王子様はラプンツェルが死んだと思って大泣きするが、この一件により、物語上も2人が容姿の壁を乗り越えたことが証明されている。

 この物語の重いところは、魔女の問題意識もまた、年齢を重ねると自分の容姿が醜くなることなのだろうと推測ができるところだ。

 これに関しての証明はない。

 だが、物語の終わりに祖父が末弟の母親に、メダルをあげるところを見ると、母親と魔女が関係があり、その母親が悪い人物ではないことがわかる。

 僕の推測では、魔女もまた悪い人間の圧力によって、悪い部分を持ってしまった費会社の1人なのだろう。

 しかし、ラプンツェル、王子様、魔女がどんな人物なのかを推測できれば、容易にわかることだ。

 僕はラプンツェルのような女性は好きだが、結婚はしないだろうと思う。

 しかし、こんな純真でやさしい娘がいたらいいなと心から感じる。

 魔女の悩みは娘がいとおしいが、その娘が王子の元へ巣立っていってしまうことへの悲しみなのだろう。

 もちろん、古典古代からの法則で、ラプンツェルは親の元を離れて行くことは、決定しているんだけど。

5. 参考文献

 太宰治 「ろまん灯籠」 青空文庫

了 

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