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執筆お役立ちエッセイ サバト! 第1回 本格派文学YouTuberベルさんの、やさしさに癒されて

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南野 尚紀 

 2010年、僕が19歳の頃は、文学YouTuberとか、ホンシェルジュとか、本を勧めてくれる仕事をしてる人ってほとんどいなかったから、知り合いにオススメを聞くか、自分でどの作品が当たりなのかって本を手探りで探してましたが、今の時代は、動画で素人にもやさしいプロにオススメを紹介してもらえるのはいいですよね。
 文学YouTuberのベルさんは、書評動画だけじゃなくて、美術館の紹介動画とか、本に関する生活の動画とか、センター試験の現代文の問題を解いてみたとか、ポップな内容も含め、いろんな動画をアップしてるんですけど、すごく見てて気分いいです。
 ああいうのをほんとの爽やか美人っていうのかなぁ、アナウンサーみたいにハキハキしゃべるんですけど、動画によっては、かなり深い感想を話してくれるんですよね。
 日本の文芸評論家には、正直、目も当てられないくらいレベルが低い人もいるんですけど、僕はよっぽどそういう人より彼女の方が評論の質が高いと思います。
 20代後半から見てるベルさんの動画、今回は宇佐見りんの『かか』の動画を見ました。
 宇佐見りんの『かか』は、僕もおもしろいと思ってて個人的には、文体に勢いがあったり、波に乗ってる感じあったりするので、『推し、燃ゆ』の方が好きなんですけど、『かか』も好きです。
 『かか』は、主人公のうーちゃんの精神的な成熟に焦点があって、それは『推し、燃ゆ』にもあるんですけど、かかの否定を含んだ先にある許容と、推しへの愛とで、メインになってる内容が違うから、『推し、燃ゆ』の方が好きっていう理由も大きいですね。
 『推し、燃ゆ』は推しとの離別を描いてるようで、実は心の中で推しを大切にするためにリアルの推しの生活とはわけて考えるっていう内容だと僕は思ってて、実はダンテの『神曲』と似てて、観念の結婚のための距離感、つまり実は、『推し、燃ゆ』は新しい喜劇なんじゃないかっていう、そこがいいんですよね。
 っていうふうに、僕が評論を書くと、観念的になってしまうんですけど、ベルさんは自分の経験とか、身近にある話とかを持ってきて説明してるので、僕の評論より10倍はわかりやすいと思います。
 すごく良識がある方で、説明も要点をしっかりまとめて、文学界を盛り上げてくれる逸材だなぁって思います。
 「母の日に読んだけど、母の日に読むべき本じゃなかったかも」とか、「初潮の経血がお風呂に浮かんでるシーンは、女性には目に浮かぶようにわかるんですよね」とか、「私は親が実は人間だったって知った時って、ショックだと思うんですけど、まるで神が人間だって知った時みたいで。本作の仏像を見て、『お母さんを産みなおしたかったんよ』って書かれてるシーンは、神に触れて、愛憎半ばする母親から離れて、心が成長するシーンだと思うんですよね」とか、そういう内容のことを話していたんですけど、ベルさんの人柄も伝わってくるいいコメントですよね。
 客観的な情報も含まってますが、自分の意見をハッキリ言ったり、ちゃんと主体的に話したりしてるのが、好印象でした。
 動画によってはコスプレじゃないけど、衣装を変えてきたり、ちょっとしたギャグを挟んできたり、サービス精神があって、見てて安心するんですよね。
 それよりなにより、しっかり仕事として文学のYouTuberやろうっていう気持ちとか、気遣いが好きです。
 僕はハンドメイド感のあるの趣味が相まったウェブサイトで、かつしっかりやろうってことなのですが、もっと仕事って意識でやった方がいいのかなぁとか思ったりしてて、これは余談ですが。
 とにかく、ベルさんは容姿も心もキレイですし、声も発音もキレイなのでいいですよ。
 動画の編集もものすごく凝ってて、見やすいですし。
 宇佐見りんの他の本の紹介とか、関連本じゃないですけど、「宇佐見りんの『かか』が好きと思ったなら、この本もオススメです!」って感じで他の作者のオススメ紹介もしてくれたり、丁寧な動画を作ってくれます。
 いやー、ベルさんの動画、楽しかったー。
 僕はまだ見たことないけど、いずれ海外の文学YouTuberさんも紹介したいなぁ。
 そんなこんなで、ベルさんのやさしさに癒されて、僕はこれから少しだけカフェで読書タイム。
 エッセイ企画の名前のサバトはイタリア語で、土曜日ですが、今日は月曜日。
 でもお盆中なので、世の中もおやすみです。

了 

https://youtu.be/6DLj_D-vjbE

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