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イタリアンミュージック紹介エッセイ モルトボーノ 第5夜 アンドレア・カリ 『Take the Line』――シチリアに吹くカラッとした風を想像しながら――

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南野 尚紀  

 僕はシチリア島って行ったことないんだけど、今、エルバ島の次にバカンスに行ってみたいのが、シチリア島だ。

 エルバ島はAyaさんって人が、エッセイでエルバ島のいろんな情報を発信してくれてるから、すごく気になってるし、なんていっても、ナポレオンが島流にあった島で、彼の別荘もあるそうだから、ぜひ行ってみた。

 その次に気になってるのが、シチリア島だ。

 シチリアワインを飲んでみたら、おいしかったからという以外にも、もうひとつ理由がある。

 それはジャズだ。

 アンドレア・カリAndrea Calìっていう名前のジャズピアニストがいて、ネットで調べてもあまり情報が出てこないので、そこまで有名なアーティストじゃないみたいだけど、僕はだれからも名前を聞かないこのアーティストのアルバムは耳に焼き付くくらい聴いてる。

 僕はジャズを聴く時、なるべくスタンダードナンバーを聴きたいんだけど、アンドレア・カリの演奏する「Five」は絶品だ。

 このナンバーはビル・エヴァンスが作曲した曲だけど、正直、本人の演奏よりも圧倒的に好きで、その理由もある。

 シチリアは地中海性気候でカラッとしているそうだけど、アンドレア・カリの音色もカラッとしてて、不協和音のあんまり濁りのないクラシック寄りのジャズだ。

 もちろん、ヨーロッパにはクラシック寄りのジャズをやる人は多いけど、その中でもアンドレア・カリはかなり推せる。

 音の輪郭がハッキリしてるのと、テンポが早いのが耳に心地いい。

 ビル・エヴァンスよりも明るい音遣いをしてるのがいいし、ビル・エヴァンスはクラスターという特殊なクローズド・ボイシングを使ってて、要するに、主に左手で弾くことが多い、コードの音の組み合わせの音階のあいだを狭く取るやり方を使っているんだけど、アンドレア・カリは、オープン・ボイシングでやってるからか、その分も明るく聞こえる。

 わかりやすく言えば、音がキレイで、リズムの取り方も疾走感があって、聴いてて気分がいい。

 ここまでカラッとした感じ、疾走感を音で表現できるアーティストは少ないと思うし、ピアノは他の楽器より、身体より頭を使う楽器だと僕は思ってて、それなのに深く考え込むときに、時々陥る不快な重さがないのが最高だ。

 音というのは、同じ音の繰り返しが気持ちいいとされていて、ずっとドレミファソラシドのドの音だけを人間の平均的な心音に近いリズムで鳴らすと安心を感じるそうだが、それだと音楽にはならない。

 この演奏を聴くとわかるというか、曲のメロディー自体もそうなんだけど、同じメロディーを繰り返し、それが少しずつ変わってくような流れになってる。

 その響かせ方が安心するし、最初に2周、リードシートをまわった後の展開の仕方が原曲とまるで違うのも、リードシートからの離れ方も笑いが出そうなくらいかっこいいし、音の畳みかけ方、どこを弾かないで飛ばすかも、ぜんぶひっくるめて、まるで街をスポーツカーで飛ばしてるかのような爽快感だ。

 たとえあなたが音楽理論的なことがわからなくても、とにかくカッコよく聞こえるはずなので、ぜひアンドレア・カリの『Take the Line』聴いてみてください。

 今日は暑いけど、電車に乗って、窓の外を眺めたり、街を歩いたりする時に、このアルバム聴こうかなぁ。

 シチリアに旅行したら、旅行記とともに、アンドレア・カリのことも書きたいし。

了 

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