南野 一紀
僕は本場のパエージャなんか食べたことないけど、それでもパエージャが大好きで、少し前に通ってたマッサージ屋の女の子に、「バルセロナ行ったことないでパエージャ好きとか言ってんの? 日本のパエージャと、本場スペインのパエージャじゃぜんぜん味違うからね。食材から、調理法から、調味料からぜんぶ違って、食べる雰囲気もまるで違う。だからあなたが言ってんのは、うどん食べて、『カルボナーラが好きだー』って言ってるみたいなもんだから、ニセの食通気取りと同じだよ」って言われたけど、それでも敢えてもう一回言おう、俺はパエージャが大好きだーーー!!
スペイン料理の魅力は、なんと言っても、見るだけで楽しいのに、味わうと、身体の奥からじわじわと熱くなって、胃から全身に「生命を燃やして明日を生きろ!」という指令が行き渡るかのように活力がみなぎってくるようで、食べ終わる頃には、仕事や遊びへの士気も自然と爆上がりに、前向きにがんばろうという気概が湧いてくるから最高に好きなんだよなぁ。
それは前提すぎるんだけど、フレンチっていうのはどっか高級すぎるというか、品がありすぎて、食べてて疲れるし、イタリアンは悪くないけど、スペインの方が情熱が感じられるから好きだ!
ギリシャ料理も好きで、一時期、関内とか蒲田にあるギリシャレストランにたまに行って、ギリシャヨーグルトと、ムサカっていうパイ生地の中にボロネーゼソースとかナスとかが入ってるのを食べてて、それも激ウマなんだけど、やっぱりそれでもスペインほどじゃないと感じる。
理由は多分、僕が魚介料理、それも海鮮丼みたいなものじゃなく、オリーブオイルも合うし、かつ焼くという料理を施した料理が好きだからなんだろう。
アヒージョも好きなんだけど、料理の王はやっぱり、パエージャだ。
油の量が違うぜ、海鮮丼や寿司とはな!笑
話は飛ぶけど、さっきXに、「コトノハ文学教室のサイトのトップページに、およそ文学的でない食べ物の代表・牛丼を、にこるんやLaufeyと一緒に載せたのは名案だった」ってポストしたんだけど、その後で思ったのは、「じゃあ、文学的な食べ物ってなんだ?」ってことだ。
かの文豪・筒井康隆先生は、編集者に焼肉に連れて行ってもらえなかった腹いせに、「肉を食わせろ! 野菜はドレッシングでごまかしてるだけのもんなんだから」ってエッセイに書いてたなぁ、そういえば。
肉料理はちょっと味が強烈で、深みに欠けるから、僕は魚介類、それもパエージャとアヒージョなんだよなぁ、文学っぽい食べ物のイメージは。
野菜とかデザートはなんだか、文学っていうより、写真とか絵画のような感じがするし、虫は食べ物じゃないから僕の中では論外なんだよなぁ。
お菓子、あれはマンガっぽいイメージがあって、理由を正せば、「ポップなパッケージ」でかつ、「手軽にコンビニでも売ってる」、「わかりやすく濃い味」、「大人も食べなくはないけど、子供向けの食べ物」とか、こんなイメージが両方に重なっているからだ。
であるからして、僕の中の文学っぽい食べ物のイメージはやっぱり、パエージャとアヒージョだなぁ。
エビとムール貝。
文学者にはやたら海が好きな人っていうのはよくいて、「スピノザは水平線を瞳に宿した人だった」と、イタリアの小説家・アントニオ・タブッキも言っていたけど、海は文学的だ。
「今夜眠らずにいれば、変わった色の魚が取れるだろう」。
これはイタリアのことわざだそうだけど、不思議な言葉だ。
夜にしか採れない魚介類。
『岸辺露伴は動かない』っていうマンガに、アワビを密猟する話が確かあったけど、夜、誰にも見つからないように、海に潜水して貝を獲るのも文学っぽいなぁなんか。
魚介類の風味っていうのかなぁ、水気をたっぷり含んだあの感じとか、塩っけの強い風味とか、身が詰まってるあの濃い感じとかは、僕の中ではどうも文学だなぁ。
飲み物に関して言えば、ウイスキーも文学的な感じがする。
僕個人は、日本酒やワインはあんまり文学を感じない。
日本酒はしんみりしすぎて、面食らっちゃうから、文学どころじゃなくとっとと寝たいってなっちゃうし、ワインは甘いし、気分が上がりすぎるから、その点、ウイスキーはちょうどいい。
一人で寝る前に飲んでうとうとするもよし、バーカウンターでマスターと駄弁りながらまどろんだ時を過ごすもよし、ジャズ聴きながら静かに身体を揺するもよし。
困難は僕の中で文学だなぁ。
僕は料理するのも好きなので、コトノハにご参加いただいた方には、極上のパエージャ用意いたしますよ。アイラウイスキーも用意しますし。
それは冗談ですが笑
それじゃ、今回はふざけすぎたかなぁ。
次は少しマジなの書くかも笑
#エッセイ #イタリア #スペイン #フードカルチャー #パエージャ #
了
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