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評論 村上春樹 「トニー滝谷」 美のモデルをめぐる冒険

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南野 尚紀 

0. イントロデュース

 イタリア哲学や現代思想では、可能性という言葉をよく使います。

 その概念が「見本」と関係があり、アガンベンはそれを現代人にわかりやすく説明するために、「個物であり、普遍的に多くの事物を代表できるもの」とはなにかと問いました。

 今回は美のモデルになぞらえて、村上春樹の小説との関係性も込みで語っていきます。

 背景には、村上春樹がトニーという人物のモデルにした人物、数人についてと、モデルの意味性にいて説いていきます。

 最高の美人のモデルはいいですよね。

 なぜなら、みんなを至高善に導き、人が生きる意味をも理解させるから。

1. 作家紹介

  一九四九年京都生まれ、兵庫出身。早稲田大学卒業後、東京の国立でジャズ喫茶「ピーターキャット」を経営する。一九七九年、初めて書いた中編小説『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞。一九八二年、『羊をめぐる冒険』で野間新人文学賞を受賞。その後も数々の賞を受賞し、二〇〇六年にはフランツ・カフカ賞も受賞。

 代表作に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『騎士団長殺し』がある。

 海外移住や旅行経験も豊富で、英語が堪能。翻訳者としても有名で、多くのアメリカ文学の小説を日本語に翻訳している。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を敢えて、英語名の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と翻訳し、タイトルをつけたことは、文学の世界では有名。

 初めて書いた小説、『風の歌を聴け』は一度、新しい文体や雰囲気を発見するために、英語で書いた文章を日本語に訳して、賞に投稿した

2. あらすじ

 滝谷トニーは三十代の男性で、父親が満州でジャズミュージシャンをやってて、何かの理由で、中国当局に捕まり殺されそうになった過去があったことが関係して、敗戦後、日本ではこれからアメリカ風の名前が増えるだろうということで、この名前になった。

 そのおかげでイタリア系アメリカ人からも仲良くしてもらえるが、学生運動の時代に、美術大学に入り、主義主張のほとんどないデザイン画を描くことで、デザイン会社を建てて、収入を得ることに成功する。

 彼はある日、とびきりキレイな女性と結婚し、日々の生活を楽しむが、彼女の浪費グセ、特に服を見せびらかすように着るのが嫌になってケンカし、その後、交通事故で女性は亡くなってしまう。

 「元妻の服が着ていた服、どれでもいいから好きなだけ着る」という条件で、アルバイトの女性を彼は雇うが、どの女性にも何も感じず、結果、トニーはまたひとり戻ったという話だ。

3. 本論

 トニー滝というそろばんを使って、歌を歌う芸人が昔いたそうで、それとも関係がありそうだけど、他にも大きな問題はあると思う。

 『海辺のカフカ』にはナポレオンの名前が直接出てくるが、この小説もナポレオン・ボナパルトを意識していると思われる。

 理由は単純で、最初の奥さん、フランスのモードの最先端を走ってたジョセフィーヌはとんでもない浪費家で、服を作り、書いまくっていたことも、この小説と付合するし、ナポレオンが別れた後、他の奥さんも好きだけど、死ぬ前にジョセフィーヌといってることは、「トニー滝谷」のラストと付合する。

 蓄財と消費はポストモダンでよく問沙汰された問題で、お金を貯めすぎるのもそれはそれで病的だ、ということを浅田彰がいっていたが、逆の消費の問題はどうなんだろうという問題にも絡んできてるし、新しい現代思想の波、イタリア現代思想の代表可能性の考え方と似ている。

 モデルはキレイな服を着こなして、キャットウォークをしたり、社交で派手な振る舞いをしたりするのが仕事みたいなものだ。

 そのモデルは、美の見本みたいなもので、本人であり、他のものも代表できる。

 つまり、GUCCIの服を来て、キャットウォークすれば、GUCCIを代表してる女性にも見えるし、にこるんのように牛丼のCMにモデルが出ると、牛丼を代表してるようにも見える。

 本人であり、他のものの代表、ダンテも詩人であり、軍人であり、政治家であり、教師であり、評論家であり、エッセイイストであり、愛妻家であり、フィレンツェ人であり、凡人だったことは、偉大なことだし、人が何かを代表する時、いろんなカテゴリーの代表者の代弁者になるのはいうまでもない。

 このことは非常に大切で、リーダーは自分の選んだカテゴリーの代表をいかに自分のアレンジや好きな人への愛を混ぜながら代表するかが勝負だから、人から何か言われても、気持ちで負けてられない。

 そんな時、トニーには絶対のリーダーが欲しかったし、内向的な彼がそれをうらやましいと思ってしまったのはやはり、彼女の死と物語上繋がっている気がするし、それでも美は永遠の美でなくてはいけない宿命を背負っている。

 だからモデルは大切で、スペイン以外にも文学にもそろそろIrene Vallejoイレーネ・バレッホみたいな英雄的作家が出てこないかなぁと思っているところだ。

 Irene Vallejoからエッセイの評論のDM送って、言われたから、送るんだけど、僕も結果トニーみたいにモデルのような美人作家の応援をするくらいが華なのかなぁと思ってる。

 だからこそ、Irene Vallejoに華のノーベル賞を飾ってほしいし、フィレンツェ買い出し紀行にも、ぜひ特別講演会でお呼びしたり、インタビューをしたい。

4. 参考文献

 村上春樹 『レキシントンの幽霊』 文春文庫

了 

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