南野 一紀
最近、スペイン料理にハマってて、なかでも好きなのが、王道中の王道だし、みんな大好きだからあえていうまでもない料理なんだけど、あえてデカい声で叫ぶと、「俺はパエージャとアヒージョが大好きだーーー」ってそれだけのことで、パエージャとアヒージョだったら、具とかにそんなにこだわることもないが、それでもやっぱり、魚介の主にエビが入ってるやつだと飲んでるウイスキーと相まって、テンションが爆上がりになるのは言うまでもないし、なんで好きかってその理由を言っちまえば、単純明快、スペインっていうのは溢れんばかりの情熱で勝負してる国だから、見て楽しむ、嗅いで楽しむ、味わって楽しむとき、他の国の料理にはないような心臓の奥底から命を力づけるような活力が湧いてきて、今夜を陽気に過ごしたり、明日を前向きに生きる気分にさせたりするから好きなんだろうと思う。
マッサージ師の知り合いに、バルセロナに住んでたことのある女の人がいて、その人の話では、「本場のパエージャ一回食べると、日本のパエージャはどの店の食べてもぜんぜんおいしくなくて食べる気にならないよね・味付けから食材からまるで違うから。本気でパエージャ好きなら、バルセロナのいいお店行ってパエージャ食べないと、ニセモノ食べてうまいうまい言ってるニセモノの食通と同じになるよ」っていう辛口の評を食ってしまって、それ知ってても、さっきみたいに、「俺はパエージャが大好きだーーーー」って叫べるのは、現実を飛び越えてパエージャが好きだってことの証拠なんだろうと、かなり恥ずかしい話だけど思ってる。
スペインって言えば、昨日の夜、『踊れ、トスカーナ!』っていうイタリア映画をみた。
稀に見る快作で、ハッキリ言えば、今までみた映画はこの映画を味わうための踏み台でしかなかったんじゃないかとか感じちゃうくらいヤバイ出来で、人生の奥義、恋愛のひとつの完成形が無理なく描かれてる。
あらすじは、トスカーナの地方で会計士をやってる男とその家族が住んでいる家に、フラメンコダンサーの一団が来て、ガソリンがなくなったから泊めてくれといいはじまり、その夜、イタリア男・レヴァンテと、スペイン女・カテリーナが恋に落ちるっていう感じの話だ。
この映画をみて思ったのは、明らかにラテン系の女性っていうのは、男性がハメ外して口説いても、「男ってバカ。でもしょうがないか」っていう表情とポーズで男性を許すっていう文化があって、この映画はその文化を全面に押し出した、許しの価値を問う映画なんだろうってことがひとつ。
もうひとつは、ムダにかっこいいとかひどい嘲笑された挙句、嫉妬の対象になり、恋愛もろとも妨害されたり、一回ミスったらそれまでの縁だからってな感じで、女性の側が恋愛の可能性すべてをその場で見限り、それっきり絶対会わないし、下手げに追いかけるとセクハラ呼ばわりされて、周囲の人間関係までぶち壊しになるっていう日本の冷たい文化とはあって、男女のすれ違いから、女性が男性のもとを去り、男性が追いかけてなんとか復縁する、ってなラテン系の小粋な文化もこの映画のベースで、やっぱりロマンの国は違うなと心から感じた。
この映画の好きなところは、イタリア男・レヴァンテが知り合いの住む部屋の窓辺の男との叫び合いで、「いずれその女はお前のとこに来るよーー!」って叫んだ後、「Ci vediamo!! チベディアーモーーーー!!」ってでっかい声で叫ぶシーンで、日本語訳を言えば「期待してるぜーーー!!」みたいな感じなんだけど、このシーンが痛快で、全力でもって女の人に会いたいぜーーーって叫べるかどうかは、恋愛において重要だって理念をこの上なく清々しいやり方で描いたシーンだから、見た瞬間、思わず笑みがこぼれるくらいうれしかった。
カテリーナがフラメンコダンスを踊るシーンも絶品で、何回もダンスするシーンがあるんだけど、誘惑する、誘惑に応えるこれが恋愛の奥義だし、ドラッグストアのヘビ顔の美人、圧が強くて辛口の女友だち、レズビアンの妹、ダンディで頭がよくてマジメすぎるくらいマジメな恋敵の男、これらをぜんぶ乗り越えて、カテリーナっていう最高の美人と夜通し抱き合う。
こんな映画今まで見たことない。
最高だな。
思わずガッツポーズしそうだ。
男女の関係からめた小説とかエッセイとか、恋愛のなんたるかを語るってなったら、この映画をみてるかみてないか、あるいは経験上、このストーリーをよく知ってるか知ってないかは、美意識の差がハッキリ出ちゃうからさ、この映画はみたほうがお得。
ってなわけで、『踊れ、トスカーナ!』みてね笑
それじゃまた、チベディアーモーーーー!!
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了
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