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月の裏側で会いましょう--善行を働くということについて--

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 南野 尚紀 

 今日はひたすら、バルでイタリア語の勉強をしていた。

 「女神」はイタリア語で、「deaデアー」だけど、「アイディア、観念」も「ideaイデアー」だということを今日、知った。

 つまり、アイディアは、インスピレーションをもたらす女神によってもたらされるということが、言葉のつながりの中で、すでに表現されているのがイタリア語ということになる。

 ドゥオーモを望むカフェで、カプチーノを飲みながら勉強するのはいい。

 寒い中、飲むカプチーノは格別においしいし。

 勉強をしている最中、Patricというおじさんが、小さい息子を連れて、話しかけてきた。

話を聞くと、「ミランからフィレンツェに来たのだけど、バッグを置いてきてしまった、車で来ているが、どうすることもできない、アイルランドの出身で、馬主をやっている」とのことで、車のキーと、彼の名前が出ているウィキペディアを見せてもらう。

 結論として、「2,000ユーロ貸してほしい」とのことだった。

 「どうやって、僕にお金を返してくれるのか?」と聞いたら、インターネットバンキングを経由して返してくれるとのことで、銀行の番号を教えると、アプリを通じて、お金の支払いをしてくれる。

 しかし、インターナショナルな取引は、すぐに着金が確認できない。

 近くのCambioでお金を引き出して、この人にお金を貸すか、一瞬、考えたが、もし詐欺だとしても、善行を働こうとした意志には、誇りに持っていいだろうと思い、彼にお金を貸すことにした。

 Cambioで900ユーロを引き出す。

「2,000ユーロを貸してほしい」と言われたが、一度に引き出せるお金が900ユーロまでらしいことが、この前わかったので、1,000ユーロだけを貸した。

What’s Appのアカウントを交換して、彼と抱き合って別れる。

 彼が本当のことを話していたかは、着金があるまでわからない。

 しかし、僕が善行を働こうとしたのは確かだ。

 心の中でそんな葛藤をしながら、Feragamoも近くを歩いていると、ストリートクラシックシンガーが歌を歌っているのが見えた。

 彼女はよく通る歌声で、夕暮れを過ぎた紺色の空が広がる広場に立って、歌を歌っていたので、それを動画に撮っていたら、歌の途中でスマホを操作し出す。

 ボックスに数ユーロを渡し、彼女に「家に帰るの?」と聞いたら、小声で「Police」と言ったので、横を見ると警察の車が止まっていた。

 急いでボックスを隠し、その場をしのいでいたが、警察はストリートミュージシャンの活動を許可してない場合もあるらしい。

これはなにかの啓示なのかもしれない、僕の創作とあり得ない不幸、彼女の一連の行為はこれらと関係があるのだろうか、などと思いながら、彼女の美しい歌声を思い出しつつ、ヴェッキオ橋の方へと歩く。

 レストランで、お気に入りのPecce di zuppaペッシェディズッパとイタリア語では呼ぶ、漁師風スープと、Spinaciスピナッチとイタリア語では呼ぶ、ほうれん草を食べる。

 幸運なことに、レジのおばあさんが、「1.5ユーロをディスカウントしてくれる」とのことで、さらに、アーモンドの味がするクッキーまでもらうことに。

 理由はわからないが、おばあさんはしきりに、ありがとうを意味する「Graizeグラッツェ」を繰り返し、強調していた。

 家の近くの通りには、中型犬を4匹も連れた女性が歩いていて、大型トイプードルを2匹、連れた男性も歩いている。

 そういえば、さっきInstagramを見たら、一昨日、グラミー賞を受賞したサブリーナ・カーペンターが笑顔でカメラを見ていた。

 もちろん、これらはすべて偶然のつながりだとも言えるだろう。

 しかしフィレンツェでは、偶然の顔をして、良き必然が人のもとを訪れて、善行を祝福してくれることもあるのだろう、と信じるには十分の出来事だった。

 とある国では正反対のことも起こるだろうけど。

 フィレンツェは素晴らしい国だ。

 善行を働く機会を逃してはいけないと思わせるほどの力も働いているし、そうでなくても、街全体がやさしさに満ちている。

 善行を働くのは良いことだ。

 このまま善行を積めば、結婚寸前まで行った仁美さんに似た女性も会いに来てくれるかもしれないし。

 少なくとも、このことは彼女に話したい。

 もちろん、善行を働くだけでなく、善について考え、言葉にするのもとてもいいことだから、これからも積極的に善行に励もう。

了 

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