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出会いを待つ時間、愛を考える時間、高度資本主義の終わりの美と新たな時代の美

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南野 尚紀  

 いつかまた会える。瞑想中に聞こえた彼女の声。いつかっていつ? 返答のない問いが心の中で発せられ、どこかへ消えていく。その言葉は心の中で発しただけだが、僕は彼女に届いたのだろうかということが疑問でならない。でもきっと届いたような気がしている。魂の世界は自分の知見よりもずっと深い。僕は彼女にまた会ったら、どんな話をすればいいんだろう。どのくらい待った? 待ってる時にどんなこと考えてた? 聞いても返ってこないだろう答えを心の中で推測する。言い出せない言葉だ。それでも、もしかしたら相手もそんなことを考えてるかもしれない。

 待つという行為が存在するのは、罪に服す人がいるからではないんじゃないかというのが最近の僕の考えだ。

 待つという行為は、待たせている人であり、待ってもいる人のことを考える時間、その周辺にある事柄をもっと考えなくてはいけない時間であり、彼女に対する考えや感情が足りないということの証拠なのだろう。

 単に彼女に対して罪があったのではない、理解がまだ足りなかったのだ。意思の力と時間の力など、世界の総対、言ってみれば、神がそうさせている。

 もっと言えば、それらを含む、天上界の彼女たちがそうさせているんだろう。

 待ち人は大抵の場合、思いがけない時に来る。

 まるで僕が不意打ちを喰らわされる運命にあるんじゃないかっていうくらい、それは思いがけない。

 しかも、思いもよらない彼女の姿に驚く出会いでもある。

 そして必ず、待っていてよかったと思う。待ち時間に彼女が考えたことはどんなことかを考える。彼女に自分が待っていた時間に考えていたことを伝えるための会話をする。

 どんな理由があっても、彼女に対して犯してしまった罪は一応あるし、時間の質はそれと関係がある。

 世界の情勢、他の人々との出会い、芸術との出会い、意思、歴史、神話。

 空間を含む物理的な要素も関係がある。

 しかし、ほんのささいなことだ。

 今晩はトスカーナソーセージを焼いて食べ、この後またブルーベリーヨーグルトも食べる予定でいる。

 女性が好きだからと言いたいがために料理を作ってる部分もあるけど、実際、僕は料理を作ってもらう方が好きなんだろう。

 民話に出てくる魔女は科学の実験するようにして、鍋を煮込んでいることが多い。

 料理っていうのは、しすぎると悪い考えが浮かぶものなのかと考えることがある。

 サブリーナ・カーペンターのMV「Please Please Please」に、牢獄を出た後、香港人らしき男性に、自分を牢獄に入れた悪人の復讐の代理をやってもらうという内容のものがある。

 最後、香港人はなぜか彼女に手錠をされて、置いていかれてしまうが、彼女は自分の中の悪性と向き合い、それを芸術としていい方向に向けたいんじゃないかと思うことがある。

 僕は彼女も待っていた。

 単に、娘にこんな子がいたらいいというような感覚で。

 僕は友人から、「美人に『心までもっとキレイにしてろ』と言いたいんだろう」という指摘をされたことがある。

 ボッカチオの『デカメロン』には、こんな物語があった。

 生き別れの妹を名乗る女性に肥溜めに落とされた後、盗賊団に誘拐されて、棺の中の教皇の死体の指に嵌められているルビーを取ってこさせられた挙句、ルビーはないと嘘をついて、棺に閉じ込められるが、ルビーを撮りに来た他の盗賊団の足を噛んで、ルビーを取って棺から脱出する男の物語だ。

 本当の美にはいくつかのパターンがある。

 サブリーナ・カーペンターは、高度資本主義社会が発生させた美の一つの帰結だと僕は思ってる。

 僕の待ち人は、結婚寸前までいって別れた仁美さんだ。

 彼女をベアトリーチェの生まれかわりだと信じ、祈り続けることは、新しい時代の幕開けと関係があるのかもしれない。

 エッセイの起源はモンテーニュではない、ダンテにある。

 だからエッセイの本質は、自由な立場からの社会考察ではない、神秘的な恋愛の解釈や自己成長にある。

 花の都Florenceで待とう。

 もう一度、彼女に結婚を申し込もう。

 この出会いがずっと先の来世まで繰り返されればいい。

 そして、もしその願いが叶ったら、アルノ川沿いにあるバルで、一緒にアペロスピリッツを飲んだり、明け方のサンタ・トリニタ橋で、一緒に写真を撮ったりして、笑顔で2人の愛を確かめたい。

了 

#南欧美学 #Southern Europa Aesthetics

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