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イブの夜のフィレンツェ、みんなが街の群像劇の主役

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南野 尚紀 

 クリスマスイブのFirenzeの夜。

 街の様子が知りたくて、ヴェッキオ橋の南に位置するホテルからアルノ川の方へと歩く。

 街には家族連れもいたけど、カップルや女性2人で歩いてる人もいて、みんなしあわせそうに、街に静けさを楽しんでるように見えた。

 「grace」という言葉があるが、この英語は「優美さ」っていう意味だ。

 Firenzeの街を歩いていると、ポーランドの詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカの晩年の頃の顔に似てる感じの顔のおばあさんがヨーロッパにはよくいることに気がつくが、そういうおばあさんを見るたびに、本当に「graceful」という言葉がピッタリな感じだなと思う。

「graceful」は「恩寵に満ちた」という意味もあるが、晩年になって、恩寵に満ちた日々を送ってるという感じが伝わってくること、この言葉とその形容に似合う人がよくいるんだなという関係性に驚く。

 アルノ川の向こうには、ライトアップされた建物が輝いていたり、それが川の水面に映ったりしていて、予想以上にキレイだ。

 空には星が輝いていて、暗すぎない紺色をしている。

 アルノ川を歩いて、グラッツェ橋を通り過ぎ、寂しい景色が広がると、街が少しずつ暗くなっていき、写真を撮る時、より紺色が映えていいなぁとか考えてたら、あっという間にミケランジェロ広場の下まで来てしまった。

 ここを登ったら、いい写真が撮れるかも。

 そんなことを思って、登ったら、本当に満足のいく写真が撮れた。

さらには、この街でエッセイを書いて、写真を撮って、ずっと暮らしてくんだっていう気持ちが日に日に強くなってることにも気がつく。

 こんな景色を見たってこと、将来の結婚相手にも伝えたいし。

 ミケランジェロ広場のダヴィデ像はライトアップされているし、端の方に立っているクリスマスツリーもひときわ輝いている夜。

 写真を撮ってる途中で気がついたけど、街には赤い服を着てる人が多くて、これはクリスマスを意識して真っ赤な服を着てるんだなってことに気づき、それが不自然じゃないのがステキだとも感じた。

Firenze人を含むヨーロッパ人には、どこか自分たちが街を華やがせているという感じがある。

 街の群像劇の主人公でもあるし、一役者でもある自分の役割を理解してるという雰囲気があるのだ。

Florenceが「繁栄」を意味する「Flontireフロレンティア」と関係あるということをエッセイに書いたが、これや「floraフローラ」という「花」を意味するラテン語以外にも、「floor」という「階層」を意味する英語とも関係があるのかもしれない、ということに思い至った。

 日本人的な発想で考えると、「花」と「階層」は関係ない言葉のように思えるけど、意外にも関係があるのかもしれない、それは美の階層という意味で、Firenzeとなにか関係があるかもしれないと思うと、イタリア語をもっと学びたくなる。

 Firenze出身のダンテは、俗語であり、話し言葉としてしか使われなかったイタリア語を書き言葉として文学で用いたことにも先駆性があるとされているが、「Florentineフロレンティア」は「繁栄」以外にも、「開拓者」を意味する「frontierフロンティア」という英語とも関係があるだろう。

 どっちにしても、僕は美しさの階層を理解し、美意識を体現できる女性が好きだ。

 ポーランドの作家、オルガ・トカルチュクが、「東欧は知識人の頭の中にある理想、幻想が作り上げたものだ」ということを講演会で話していたそうだが、美の理想を思い描く人と美を体現する人は物理的に離れてるだけで、魂はどこにいても呼び合ってるというか、距離が遠くないんじゃないだろうかと感じる。

 だから、今、理想の女性が目の前にいなくても、きっと魂が近いから、出会いを重ねていれば、自然とお互いを呼び合えるんじゃないということを思っている。

 それにしても、今日の夜空は透き通った紺色をしてる。

 いつか理想の女性に会ったら、このエッセイを見せて、「きっときみのことずっと呼んでたんだと思う」ってことを話そうと考えた、クリスマスイブの夜だった。

了 

#エッセイ #フィレンツェ都市観察ログ #美学

#essay #Firenze Watching City Log #aethetics

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