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評論 石原慎太郎「死者との対話」 公として、アルターエゴとしての石原慎太郎の死生観、天国からだれか派遣して、悪党・石破を政界から追放してくれ

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南野 尚紀 

   1.イントロデュース

 僕は石原慎太郎という作家が好きで、政治家としても、天才的な人だったと思うんだけど、それは僕にない要素を多く持っていたからなのかもしれないと、この頃思う。

 石原慎太郎の暴力的なまでの力強さ、歯に衣着せぬ大胆な姿勢、遊びも上手な大人のジェントルマンとしての生き様、今でも憧れるけど、どこか近代的なところ、現代的なところではない近代的なところがあって、リアリスティックで、ハードボイルドなところは少し首を傾げてしまうところもなくはない。

 だからこそ、僕の中で年々、興味が深まっていくし、ロマンティックとも全然違う、粋な部分があって、豪快かつ豪放な彼の考え方というのは、魅力的だ。

 ミーハーなところもあるけど、コンサヴァティヴで通せるところはいいなぁと。

 村上春樹は欧米志向なところがあっていいけど、友達になるなら、石原慎太郎だなって思ってしまう、エッセイや動画など、話を聞いてて楽しい人で、長いモノに巻かれない、あくまでも美しい人に巻かれる彼の姿勢は好きだ。

 そんな彼の死生観をできる限り深く、歯に衣着せぬ姿勢で書いたので、ぜひ読んでほしい。

 歯に衣着せぬは、紀元前1000年前に古代イスラエルの王だったダヴィデもこだわった英雄の特権だし、青嵐会の重要な掟でもあるからな!

   2.作者紹介

  石原慎太郎はいわずとしれた、日本の作家であり、政治家だ。

 文学者としては、一橋大学法学部在学中に、『太陽の季節』で文學界新人賞、芥川賞を受賞。その後も、文藝春秋読者賞などのさまざまな文学賞を受賞し、芥川賞の選考委員も長く務める。

 主著は、『「NO」と言える日本―新日米関係方策―』、『男の粋な生き方』、『弟』、『湘南夫人』。

 政治エッセイ、自伝的エッセイ、ミリタリー小説、スポーツ小説、青春小説など、ジャンルは様々。

 作家では、三島由紀夫、中上健次、猪瀬直樹との交流が深く、猪瀬直樹は石原慎太郎の評伝を書いているし、中上健次もエッセイで石原慎太郎を絶賛している。

 政界進出する前に、東映で働いていたこともあり、映画や演劇関係の仕事にも携わったりしていた。

 スポーツにも関心があり、湘南高校ではサッカー部に所属。大学卒業後も、テニスとヨットレースを続けていて、ヨットレースでは大会で圧倒的な戦績を残す。ちなみに、神谷町にある石原慎太郎の部屋には、ヨットレースの大会で優勝した際のメダルやトロフィーが多数飾ってある。テニスに関しては、テニスに集中しすぎて、国会の時間に遅れたことが物議を醸したことも。

 政治家としては、衆議院議員、運輸大臣を務めたのちに、東京都知事で四選を果たす。

 ディーゼル自動車の排ガス規制、首都大学東京の設立(今は東京都立大学に戻ってしまったそうだ)、東京マラソンの創設を支援。東日本大震災の際には、福島の汚染された瓦礫の一部を東京都が引き取ると宣言し、問題解決に一役買った。記者会見で、東京都以外の地域が瓦礫を受け入れないことを非難し、「我欲のみに固執するから天罰がくだるんだ」という趣旨の発言をして、バッシングを受けたことも。

 日中友好の印として、パンダを日本の動物園で飼育するにあたっては、「パンダには尖閣と名づけてるべきだ」という趣旨の発言もあった。

 アジアの問題に対しては、「尖閣諸島を東京都が購入する」という発言や、「日本の朝鮮学校では日本を蔑視するような歴史教育をしているから、税金を使って支援する必要はない」との発言により、在日朝鮮人に脅迫状を突きつけられたり、命を狙われたりしたこともあったが、積極的に日本の文化や安全保障問題に取り組んだ。

 アメリカに対しては、横田空領の問題、そして沖縄の軍事基地での軍人による少女のレイプの責任を追求しない日本政府の姿勢にも、疑念を呈し、解決に取り組む。

 生涯、タカ派の政治家として、活躍し続け、時代を象徴する人物となった。

 彼が仲間と創設した「青嵐会」は、中川一郎、浜田幸一、渡辺美智雄を中心とした政治団体だったが、「歯に絹着せぬ」「いたずらに議論に堕することなく、一命を賭して、右、実践する」、をモットーとしており、忖度をしない態度も人気を博したひとつの理由とされている。

   3.あらすじ

 主人公の男は、社会学部の大学4年生で、精神病院で介護のアルバイトをしていた。

 ある日、著名な音楽家でうつ病を患っている男性の介護をしてくれないかと、病院の職員から頼まれ、その仕事を受けることに。

 精神病なのが信じられないほど、普段から落ち着いている患者の車椅子を押しながら、庭に出たりして、会話を繰り返す。

 時には、ヨットレースについて、時には死について。

 彼がヨットレースで死んだ人のことや、死にかけた経験がある人のことを話すと、患者は海に興味を持ち、彼と剱崎に行く約束をする。

 海で彼は、ヨットレースで死んだ人の中には、電話なんかかけられない状況なのに、奥さんに電話をかけてきた男がいて、その男の娘も結婚式の前夜に、見知らぬ男から「おめでとう」と一言、電話がかかってきたと話しているらしいということを患者に話す。

 天国から電話がかかってきたんだろうかという話になるが、患者は天国を信じることなく、死んだら、1人でなにもない道をずっと歩いていくんだと話し、お寺で遊んだ時、お堂の下で真空になってる空間があり、それに触れると指の肌が切れるが、それが虚無があるという証拠なんだろうということを話し、病院へもどる。

 そのあと、彼と患者はレストランに行き、患者がうつ病ではなく、多発性硬化症であることを打ち明ける。

 彼は患者と最後までいるのが怖くなって仕事を辞退しようとしたが、ゼミの教授と相談した挙句、仕事を継続することを決意。

 患者は体が動かなくなっていき、意識もなくなるが、ある日、意識を取り戻す日が来る。

 その日に患者は彼と「天国から電話できたらする」という内容の約束をし、終幕。

   4.本論

 後期の石原慎太郎は、アートとしての小説というよりも、大河小説としての小説を書くことが多く、エッセイもハードボイルドなエッセイがほとんどだったけど、本作「死者との対話」もその両方の要素が出ている、石原慎太郎らしい死生観が濃厚に打ち出されている作品だ。

 石原慎太郎の89歳の死に際して、死んだら無だからあの世などないと話していたし、三島由紀夫が晩年おかしかったと言いつつ、どこかで三島由紀夫のような英傑の死を羨ましがっていたようなところがあり、死と向き合う時間をつくられ病死するのは、あまり好ましい死に方じゃないというようなことを語っていたことを覚えている。

 石原慎太郎は世の中に関する見識が深いが、彼が信奉してた法華経の影響なのか、死に対する考え方がリアリスティックというか、日本人が持つことが多い死生観に近いものがあった。

 もちろん、本作品はフィクションとして書かれているから、どこまでが石原慎太郎本人のメッセージかはわからないし、彼自身、東京都知事として政治を行なっていたことが関係してるのか、日本と運命をともにするという考え方は、責任感を伴って、深くあったように思うし、これには日本というか、欧米以外にはありがちな、国家イデオロギーと自我が未分化な感覚が含まれているから、その辺はカテゴライズすればあいまいな表現にはなるが、そういったことが頭に想起される内容ではある。

 印象的なのが、小説内で、主人公が看病する相手が、寺の地下で遊んでると、空間が真空になって、触ると肌が切れるということがあったということを話していて、それが自分の死後は無であり、敢えて言えば、1人でなにもない道をひたすら歩き続けることに似てるんだろうということの根拠だということとして、そのことを話しているシーンがあるが、ある意味では、天国を信じられない、というか、最後、少しだけ信じるような様子が微かにあった彼の死生観であり、小説には書かれていない罪業の結果なのだろう。

 石原慎太郎が死んだ後は無だと話していることから、死生観は天国からかかってきた電話の話を信じている主人公よりも、看病する相手に近いような気がしたけど、実際は主人公に近いのかもしれないと思った。

 要するに、日本人としての公の立場として、わけて考えた時に発生する死生観が、患者の考え方という側面があり、日本という国や日本人の立場を想定した時に発生する、石原慎太郎のアルターエゴのような考えがそこには投影されているのだろう。

 僕はFirenzeで一生を過ごしたいという思いがあるからということもあり、ダンテの描く世界のように、地獄、煉獄、天国があり、世界観をほとんどそのまんま受け入れてるというか、合致しているので、天国はあるし、生きている今この現世にもあると考えていて、それからして、この小説の死生観は、20代後半まではそんな死生観に似てるものがあったかなぁって思うくらいで、そもそも僕はハードボイルド自体好きじゃないし、死よりも生きることに執着があるし、そう信じられることで、魂は永遠に外見の姿だけを変えて生き続けると思ってるから、この死生観自体は間違っていると思うし、アジアには魂の行方が本当にそうなって消えてしまう人が多いのかもしれないとは思うけど、捉え方はやっぱり世の中の法則や成り立ちを考えると、不自然ではある。

 僕は生きることに執着がある一方、肉体は消えたら消えたで、なにかあるんだろう、来世どうにかするということも思っているので、この世への、肉体的な生への未練があるこの小説の考え方は、脅しのようなところがある気がするし、石原慎太郎自身も主人公のように天国を信じる経験の方が強いのに、日本人として生きると決めた自分に意思がどこかそれを孤独に追いやってるという感覚があるのかもしれない。

 僕個人は石原慎太郎自身は、天国に行ってほしいと思うし、さらに言えば、あることをきっかけに天国に行ってるなという確信があるし、それはあんまり話しても根拠の希薄なことなので話さないけど、彼はマジメというか、人間の業について考えるのに、どこか天国を信奉する情熱はないんだなとも、いろんなことを経験すると考えてしまう。

 最後の審判じゃないけど、天国で神に近づくための判決を変えるための祈りということは、そんなに興味がないのかもしれない。

 途中から、作品の評論というよりも、石原慎太郎にはもっとこうあってほしかった、というか来世でもこうあってほしいという話になりゆき上、なってしまったけど、悪と戦うということは徹底してしたし、天国での人間関係は改善してるんじゃないかなとは思う。

 死生観について考えるっていうのは、僕なりにはこういうことだ。

 石原慎太郎はリアルに物事を考えられるって意味で、政治家としては天才だったけど、小説家としては、まだロマンティックな考え方が足りなかったかな。

 それでも日本文化の担い手として、僕の中では、歴代日本文化の中でも相当に上位にランクインしてる。

 イーロン・マスクは親日家で、日本はXにとって理想的な国だということや、日本は必ず復活するということや、今のままでは日本はダメになるということを言ってるけど、今でも日本に希望を持ってくれてる欧米人がいるんだし、日本にも応援したくなる人が今でもたまにいて、どうにかするべきとは思うけど、石破のこととか見てると、憂国だなと感じるし、天国では石原慎太郎もがっかりしてるだろう、天国からだれかを派遣して、石破を政界から追放してくれ。

了 

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