南野 尚紀
三島由紀夫は、「我が友、ヒトラー」で「アドルフは芸術家」と書いていたが、僕も彼はどこまでも芸術家であり続けた人だと思う。
この本はローマで読んでたけど、この本を読んでると人に知られるのも嫌だったから、途中で捨ててしまった。もちろん、再読してもいいと思ってる。
ヒトラーの名言には、「夜も昼も、寝ても覚めても、このことで私の頭は一杯である。ドイツはどうなるかと」というものがあり、日本も中国も人種的に劣等でなく、むしろ彼らがその人種の意味や伝統に気がつくほど、優秀になるものなのだろう、ということも話していて、僕にはこれらの話が驚くほど響く。
僕も、夜も、昼も、ウクライナが、イタリアがどうなるか、僕の好きだった女性がどうなっているか心配だし、イタリアに行くことが決まっていても、日本人の中の理想の日本を考え、行動し、伝統を誇りに思う日本人はやはり尊敬する。
他にも、芸術は国家、民族、時代、誰の制作かはどうでもよく、流行、服装のように、芸術が明日へと向かっていると話していて、僕はこれにはあまり共感はしないが、ドイツ国民の希望のある生活や、国の栄華のためには必要なものだろうとは思う。
芸術は、その人が今夜、あるいは、古今東西の夜、誰が何を考えたかを考えることにこそその奥義があると思うので、ヒトラーは芸術家というよりも、政治小説家向きだったんだろう。
政治小説家は、人間の無意識を考えるよりも、人々の未来や国際政治の行末を気にする方が大切だからだ。
印象派の芸術家に関しては、「ドイツの牧草を青に、空を緑に、雲を黄色に、物事を違ったように見るアーティストがいる。「実際に草や空や雲がそう見えているのかもしれない。そうであれば、その人間に必要なのはアートではなく、眼科だ。芸術的ではなく医療的に興味深いものだ。もし実際にそう見えているのでなく、なにかしらの創作上の理由によってそう描いているのであれば、それは国家への冒涜である。われわれの国土を歪ませた人々を惑わせるなど、刑罰に処すべき大罪だ」という発言をしていて、僕もここまで極端な発言はしないまでも、少し賛同できる部分もある。
政治家は今でも、「この国の伝統と安らぎを」よりも「自由と民主主義の誇りを」という言葉を、どんな保守政治家でも使う。
これは、時代の成り行きもそうだけど、伝統や安らぎを確保できても、遊び程度に、自由や民主主義はあってもいいような気がするという一種の気まぐれや、一般市民の願望の意思の反映から成り立っているんだろうし、僕も伝統と安らぎほどでないにせよ、自由や民主主義はいいものだと感じる。
ヒトラーにはドイツ国民や同盟国を守らなくてはいけない、という責任があった。
正しさに基づく直観、神がかり的な知性、個人が抱きたいと思う主観(それが束の間のものでも、安らぎには悪くない)、それらにまったく関係ない芸術が、ヒトラーが批判した芸術であり、大罪への道でもあるんだろう。
僕の芸術観は、ダンテ、シンボルスカ、ZARD・坂井泉水、オルガ・トカルチュク、アニー・エルノーなど、そのあたりの影響が大きいと今の段階では思ってるんだけど、ヒトラーの芸術観にも近かったんだなと思った。
なので、いずれ責任を取って、イタリア政治、政治小説のウェブサイトを作ろうと思う。
なかなか濃い話をしてしまったので、話は次。
僕は人生のある時期、人気のない場所だけど、自転車でそれなりに行くと町があって、海も近くてという場所に住みたいという願望があった。
鎌倉の稲村ヶ崎の山の方とか、極楽寺にはそういう場所があり、そういう場所で、結婚相手を見つけて、説得して、その範囲内でできる仕事をしながら、なるべく結婚相手以外とは関わらないで生活することはできるかとという願望だ。
その場合、おそらく、今書いてるエッセイは絶対に日の目を見ることはないし、相当に自活するという強い意志がないと、生活もどんどん落ちぶれて行くだろうことは予想がつく。
それでも愛する人のためのそういう生活をしたいかどうか。
僕の答えは「ノー」だった。
まずイタリアのシエナに行った時点で、「こんないい街があるなら、ぜひ住みたい」と思ったし、フィレンツェに近い田舎町なら、海のあるピサでもいいということで、食事もおいしい、芸術の都フィレンツェも電車で1時間、こんないい街はないということで、住まない理由がないからだ。
それに価値ある愛というのは、見られるべきものなのだろう。
特に価値ある恋愛を志す、美学的に優れた人々にこそ。
それを形にしたエッセイも。
そういった結婚やエッセイを僕は目指しているし、そうなると期待もしてる。
そんなことで僕はピサに住むことにするけど、海はやさしい方がいいし、女性は美に厳しい方がいい。A
美に厳しい女性は大半、海のように寛大で安らぎを与える大きな心を持っているから。
了
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