南野 尚紀
文学をやっていて、文学の話ができる仲間がほしいと思ったことが、僕は何回もある。
仲間がいるだけで、作品を読んでもらって感想を言い合ったり、本の感想を伝え合うだけで、文学は楽しいものになるし、文学に対する考え方も変わるからだ。
昔は文学の仲間や知り合いもたくさんいて、結果として、イタリアに住むことがほとんど決まりつつあったり、作品の質、そして、人間としての精神的成熟を遂げたことによって離れていった友だちもいるけど、それも自分の成長を実感する悪くない機会だと考えてる。
今回は自分が過去にどんな方法で文学の仲間を作ったか、そのオススメを伝えようと思う。
つなげーとやジモティーなどの募集掲示板を使うのもいいし、Xで「#読書好きさんとつながりたい」とか「小説」とか「文学」で検索するのもいい方法だけど、僕の経験上、この方法だとそれなりのつながりしかできないので、他の方法をオススメする。
1. 猫町読書会
猫町読書会は、山本多津也さんという、幻冬舎で働いていた方が主催の読書会で、毎月10以上のイベントを開催してる。
新宿のホストクラブのスペースを借りて開催してる異色の読書会もあって、僕はその回に一度、参加したことがあるんだけど、読書会も盛り上がったし、二次会の懇親会は本当に楽しかった。
懇親会ではいろんな参加者や運営側の人と話したんだけど、本当に文学が好きな人からそれなりに文学が好きでもっと知りたいっていう人までまちまちだ。
具体的には、書店をやってる人、出版社の営業、中上健次のファン、俳句と短歌が好きで小説も読んでる人、その時、ゲストで来ていた鈴木涼美のファンなど。
連絡先を交換した人もいるし、いいイベントがいれば、また参加したいと思う。
関東だけでなく、東海や関西でやってるイベントもあるし、オンラインのイベントもあるし。
時々、映画の感想会やブルーノート東京でジャズを聴く会もやってるので、それも少し気になってる。
猫町読書会
2. 朝日カルチャーセンター
数年前に中上紀という作家のエッセイクラスと小説クラス、そして野村喜和夫の現代詩のクラスに通ってたことがあった。
中上紀は中上健次の娘さんでもあり、彼女自身の作品もおもしろく、常識のある大人な講評を出してくれるので、すごくいい。中上健次のことも詳しく聞けたし、時々、クラスの終わりに懇親会をやることがある。偶然、それには参加できなかったけど、以前やってた文学教室で講師をやってもらったこともあり、何回も話したことがあった。
中上紀は作家の知り合いもいて、日本文学の世界がどういうものかをよく知っているし、アメリカ本土、ハワイにも住んでいたことがあるだけでなく、東南アジアをよく旅行していたので、視野が広い。
野村喜和夫は現代詩の世界の重鎮で、アカデミックな知識だけでなく、実作の方法論、考え方を詳しく知っている。
彼に教わったことでよく覚えてるのが、「ギリシャの古典にすべての物語の型が詰まってる」ということで、言葉の実験を得意とする人なのに意外なことを言うなと思ってたんだけど、実際に読んでみると、本当に物語の原型になる作品がほとんどだった。
フランス語も大学で教えていたことがあり、日本の近現代、古典、そして海外の近現代、古典まで幅広く知っている素晴らしい講師だ。
彼のクラスも授業終わりに懇親会があるので、講師だけでなく、生徒とも仲良くなれる機会があるので、ぜひオススメ。
朝日カルチャーセンターの新宿教室は、都庁の近くにあるので、敷居は少し高いけど、その分、ハイクラスな仲間ができるかも。
僕は行ったことないけど、「海燕」の元編集長で、小川洋子などの有名作家を排出したこともある根本昌夫のクラスは、キャンセル待ちに半年並ぶこともあるくらい人気だ。
僕の知り合いの話では、懇親会もあるらしい。レベルの低い作品を書いてくると講評がほとんどされないで次の作品に回されるということだけど、実力がついてきたと思える人は、通ってもいいと思う。
現に、彼のクラスからは、小川洋子以外にも、芥川賞作家や新人賞受賞作家は何人も出てるし。
朝日カルチャーセンター
3.小説的思考塾 講師(保坂和志)
中上健次のファンだから、僕は熊野大学を贔屓目に見てしまうけど、同じくらい保坂和志さんもファンで、実際の盛り上がりで言えば、この会はいちばんオススメできる。
小説論を基盤に、時々横道にそれて、雑談とかもするんだけど、作家としての知識も経験も豊富で、数々の傑作を残してきた保坂さんの話はいつ聞いても楽しい。
彼がいつも語るのは書くという行為、そしてその身体性についてのことが多いし、アイディアを出して書くことの価値の重さについてもよく語っているが、なかなかこの手の話をする作家は現代の日本ではいないので、貴重な存在だ。
懇親会もあり、参加した時は、お酒を飲んで、みんなで野球とか小説の話をした。
詳細はエッセイにまとめたので、ぜひ読んでほしい。
保坂さんの仲良くしてる人で、新人賞を受賞した人も多いし、本当に仲良くなると作品を読んでくれることもあるそうなので、ぜひ参加してみてください。
アーカイブを見るよりも、実際に参加することを僕はオススメします。
保坂和志 小説的思考塾
http://hosakakazushi.com/?cat=8
保坂和志 公式Xアカウント
https://twitter.com/HosakakazushiO?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
4.熊野大学 創始者(中上健次)
熊野大学は1992年に亡くなった中上健次さんの創始した講座で、今でも中上健次を後援する人たちが集まって、浅田彰、松浦寿輝など、有名ゲストを呼んで、講演会をやっている。
僕も一回だけ、和歌山県の新宮まで行って、参加したことがあるんだけど、本当に中上健次が好きな人が集まってくるし、僕が知らなかっただけで懇親会もあったそうだ。
もし可能であれば、もう一回は参加して、懇親会も出たい。
芥川賞作家の宇佐見りんも、中上健次のファンでそのことをよくインタビューなどで話している。
中上健次のファンは本当に文学が好きな人がほとんどなので、話していて楽しいし、中上健次の作品はいい。
僕は「海へ」、「六道の辻」がいいと思うので、ぜひ読んでみることをオススメする。
熊野大学公式サイト
了
#読書会 #文学 #エッセイ #お役立ちエッセイ #サバト #中上健次 #保坂和志 #小説
#Reading book #Literature #essay #Literary Useful Essay #Sabato #Kenji Nakagami #Kazushi Hosaka #Novel
コメント