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文学お役立ちエッセイ サバト! 第5回 保坂和志の小説的思考塾、行ってみた

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南野 尚紀 

 2024年9月29日、東京の巣鴨でやってる保坂和志さんの小説思的考塾に参加してきた。
 保坂和志さんは1995年に芥川賞を受賞していて、日本文学界では重鎮的なポジションを占めている作家で、僕は20歳の頃から保坂さんのファンだ。
 保坂さんの経歴や作品については、ネットに情報が載ってるので、ぜひ調べてほしい。 
 『季節の記憶』に関しては、いずれ評論を書くので、その際に執筆の機会を譲ることにする。
 今回は保坂さんが講師を務める思考塾が、どんな感じだったかを話していきたい。
 はじめは保坂さんが親しくしていた作家の話からはじまって、ゲストで登壇した杉本さんという保坂さんと昔から仲良くしているファンと対談した。
 大まかな内容としては、杉本さんがフリーランスで仕事をしている中、小説がずっと書きたくて思うところがあるんだけど、なかなか書き出せずにいるということに対しての回答と保坂さんの小説や世の中に対する考え方を話していくという感じだ。
 保坂さんは話のつながりはあるんだけど、全体として、まとまりがない話をするのが特徴で、その瞬間の関心事を気分に乗せて話すことが多い。
 なのでどんな流れでその話がこうなってという、筋を追うように話すのがなかなか難しい。だけど、どんな話をしたかは伝えることができるから、それについて話そうと思う。

 小説を書く場合は、飲み歩ってちゃダメで、ある程度、1人になる時間が必要。みんなで飲み会やってる時に、ちょっと俺、小説書いてるからとは言えないわけで、自分も西武のカルチャーセンターに勤めてる時、29歳くらいまで仕事終わりに同僚といつも飲んでたんだけど、どうしても小説が書きたくなって、打ち合わせがあるって言って、飲み会断って小説、書いてた。
 池袋だと高田馬場とか、巣鴨が近くて、そこに落ち着いた喫茶店があるから、よく行ったんだけど、その当時、外でワープロは使えないから、原稿用紙で書くしかなかったんだよ。

 関係ない話だけど、年賀状って大切な文化だと俺は思ってて、日本は年賀状残すべきだと思う。
 年賀状ってあいさつのついでに、なんか一言書けるでしょ。
 あれでさ、出版社勤めてる友人に書いたわけ、あなたもこのまま人生終わる気はないでしょって。
 それずっと彼は心に残ってて、結果、彼も宮澤りえの『サンタフェ』っていうベストセラーの写真集出すんだけど、あの感覚って、俺らの周り以外ではわからないと思うよ。

 古市っているじゃんコメンテーターの、俺あいつと八重洲ブックセンターで対談したことあるわけよ、『未明の闘争』かなにかの出版の後、そしたらさ、やっぱりテレビのコメンテーターだから、通りいっぺんのことはいうわけ、で、あいつ芥川賞の候補まで行ってさ、要するに小説っぽい形になるように書けばいいんでしょみたいなことってすごくよくわかってるわけ。それで、杉本に芥川賞の候補になったやつ読めばって言って、その後、杉本、感想とか言ってきたじゃん。で、俺、ごめん読んでないって答えたじゃん。あれ最初の方は読んだんだよ。でもくだらないこと書いてるからいいやってなって読んでないわけ。で、その後、それ読んだんだけど、それがチャットGTPに俺が出した『カフカ式練習帳』の冒頭だけ書いて、この小説の続き書いてってやったのとほとんど同じ感じなの。だからじゃないけど、これが芥川賞候補になるんだから、杉本も気楽に書けばってもともとは言いたかったの。

 他にも小説を書く行為というのはどういうことなのかとか、儲かる小説と文学は相容れないことがほとんどだという話など、いろんなことを話していた。
 杉本に対しては、小説にこだわらなくてもいいとか、小説を書く時に外にあるものを借りて来るんじゃなくて、内から出てくることを実感するよろこびが大切なんだとか、小説書いて有名になりたいなら、型を決めて、くだらない話でもなんでもとりあえず小説っぽくなるように書けばいいんだよとか、いろんなことを話してた。
 その後、懇親会になって、テーブルを出してお菓子とかが出る軽い立食会をやったんだけど、その時は本当にバカな話をした。
 「石原慎太郎好きなんだっけ?」、「好きですよ。やっぱり、戦う作家だったんで」、「石原慎太郎は絶対ち○ぽ、小さいんすよ。だってそうでしょ。言うことが威勢いいやつって大抵、ち○ぽ小さいんすよ」、「え? なにそれ見たの?」、「いや、見てはないですけど、絶対小さいんすよ」、「一番ピッチャー大谷は本当に感動した。やる栗原と思って」、「そうなんすか?」、「昔は、4番は一番、ホームラン打てるやつって決まってたんだよ。でも大リーグっていろんな統計とか調査するから、1番にいちばん打ってるやつがきた方がいいってわかって。それで打てる大谷を1番においたっていうあれがすごいんだよ」、「俺は村上春樹か龍だったら、ダンゼン、龍推しだね。俺ね、会社帰りに、明日も仕事かってすっごく気が沈んだことあったわけよ。そん時に、慰めてくれたのが、龍の『トパーズ』なんだよ。あれいいよね」、「でも村上龍は女の人のことモノとして見てますよ」、「まぁ、そういうとこなくはないけど、やっぱいいんだよ龍は」、「うちのねこ外で、うんちしちゃうんですよ。道端とか。道端だけだったらいいんですけど、隣の家とかにうんちしちゃうことあって」、「放し飼い?」、「そう。家の中ですればいいのに、やっぱり気持ちいいんでしょうね、外でするのが」、「犬ってベッチャってうんちするじゃん。ねこって割とコロってうんちするんだけど、うちのりんちゃんはべちゃってうんちするから、外ですると大変なんだよ。え、隣の人、苦情とか言ってこないの?」、「だからお菓子とか持っててすみませんって行くんだけど、逆にかわいがってくれたりして。うちのなっちゃんって子もべちゃってうんちするんです」、「なっちゃんって『季節の記憶』に出てきましたよね」、「そう。なっちゃん」、「季節の記憶ねー。あれね、なっちゃん出したのは唯一の失敗だったんだよ」、「なっちゃんて感じ悪いですよね」、「でもあれ、なっちゃんはなんかわけわかんない事件に巻き込まれてたじゃないですか? それは仕方ないんじゃないですか?」、「そうなんだけど、やっぱりなっちゃんは出すべきじゃなかったんだよーー」。
 そんなこんなで10時くらいに解散になったんだけど、保坂さんの講演会は見識があるファンが登壇することもあったり、保坂さんが推している新人作家が新人賞を取ったりすることもあるので、ぜひ参加してみてください。

了 

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