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東ヨーロッパの美学は、なぜ美学的、倫理的に正しいのか

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南野 尚紀 

 イスタンブールに滞在する最後の日の夜明け頃に、ある美学的、哲学的事実に辿り着いた。

 一つは無というのは存在がないということなので、たくさん存在することを示す量よりも、質に近いと普通なら考えそうだが、不思議なことに実際には量という概念の方が無に近いことがほとんどだという事実だ。

 インドや中国のことを考えると、すぐにわかるだろう。

 インドは世界最大の人口を抱える国だが、0の概念というのを発見した国だし、存在論的な無にこだわる仏教発祥の地だ。

 中国も人口は世界で2番目に多いが、存在論や存在が無くならないことを表す永遠性の否定から成り立つ社会主義の思想を国家イデオロギーにしてることから、無を軸にした国家である。

 その反対に、イタリアは神学、哲学において、なぜ存在するかを追求する存在論が発達した国で、実際、人口はそこまで多くないが、極小でもない。

 つまり量においても、存在論的にベストな質を重視してるということになるが、なぜ無と量という概念が近いのだろう。

 やはり量が多いということは、質が薄いがゆえに、無に近いということなんじゃないだろうか。

 つまり一見、矛盾してるようだけど、質の量を求めると、具体的な量が減るから、無に近くなるように具体的には見えるのかもしれない。

 無にこだわる国家が量にこだわるのは、質を否定する、もっと言えば、質の量とそれに関わるものに対する否定性と明らかに関わりがある。

 美学やそれを体現する美の存在というのは、だから尊いのだろう。

 それは中国やインドが、悪の国・ロシアと手を結んでいることからもわかる。

 中国は実際に政治的にも、周辺民族の強制的な思想改造や言論統制や暴力による民主主義者の弾圧など、かなり悪いことをやってるし。

 つまり、悪の定義としては、質よりも量や無の概念を重視し、それを反映させた思想を暴力、強制的な方法、恫喝で、他国や他人に押し付ける国は悪いことになる。

 だがこうも言える。存在論的に、具体性や繁殖を司る性愛を重視している考えを一部持っているにも関わらず、それを積極的に表出しようとせず、むしろ美学や美に向かっていけるし、そもそも精神や外面が美しいがゆえに、ほとんど美学の体現者である美そのものである、悪質を超克することにより、美学や美にたどり着くことができる国や人は正しく美しい。

 僕がこれに関して想うのは、東ヨーロッパの国々だ。

 そういう意味で、東ヨーロッパの美を体現する人や、その国の人々の多くは国家イデオロギーや国家の抱える美学を信じる限り正義であり、美であるのだろう。

 イタリアもそういう側面はあるし、だったらイタリアの美質に近い女性と結婚するべきと普通は判断するがなぜかそうではなく、僕は東ヨーロッパの美学を体現する女性と結婚したいと感じる。

 ポーランドの作家、オルガ・トカルチュク、シンボルスカも好きだけど、僕にとっては、東ヨーロッパの美を体現していた結婚寸前までいった女性、仁美さんはその美質と共通する要素のある神秘的な女性だったから、仁美さんに似た人とは絶対に結婚したいと今でも思う。

了 

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