南野 尚紀
今日は僕が人生で初めてイタリアに行く日で、羽田から出発した飛行機の中でこれを執筆しているんだけど、飛行機の中で時間があるからってことで、「Toto è Cleopatra」っていう映画を見た。
大筋としては、エジプトを訪れたローマ軍のアントーニが、クレオパトラと知り合い、好きになって、戦争をしつつ、クレオパトラを愛するっていう内容なんだけど、古典的でシリアスだったり、ユーモアに富んでいたりして、最高におもしろい。
どこがおもしろいって聞かれればいろいろあるけど、まず主演がジャズミュージシャンのトニー・ベネットに似てて、途上、クレオパトラから「トーニ」って呼ばれ始めるところはジャズ好きにはたまらない。僕はそこまでトニー・ベネットの音楽は聴かないんだけど、それでも凝ってるなぁと。
キレイな女性がトラのような強い動物が好きだとか、鼻が大きいのを気にしているとか、それがベタベタで好きなのもあるが、難しい言葉は言わずに、顔や動作で笑わせたり、中心人物の周囲のキャラを弱めたり、出演の頻度を減らしたり、王道の王道をいくスタイルは見てて、感動すら覚える。
クレオパトラは気位の高い女性で、ローマの将軍のアントーニに「愛してる」って言ってたのに、アントーニが寝ぼけて、名前を間違っただけで、その辺にある壺とかを破壊しまくって、「殺す」って言ったり、果ては、ほんとに暗殺を仕掛けるが、アントーニがクレオパトラの誘惑に乗っているところを男に殺させる予定で寸前まで行くのに、いざアントーニにやさしくされると、10分後には、平気で暗殺をやめたりしてしまう。
他にも、「Thank me 私に感謝しろ」とか「I’m dying 私は死んでる」とか、ふつうでは言えないような言葉も平気でいっちゃうし、軍の指揮もとっちゃうし、好きな男の影武者を殺した挙句、本物に会ったら気まぐれに許して、しれっとローマに連れてってもらっちゃうし、もちろん、これは史実ではないので、歴史改変の妙味がここにあるんだけど、これは僕が見た映画の中では『Il Cicolne 踊れ! トスカーナ』と『La Dolce Vita 甘い生活』に並ぶくらいの名画だから、ぜひいろんな人にオススメしたい。
他にも、アントーニがあらわれた影武者としゃべって自分がわからなくなるシーンとか、鏡の向こうに影武者がいるのに気がづかず、影武者が自分のマネをするのを見て、自分を確かめたり、お医者さんを逆に診察してその男を怒らせたり、やさしい正妻もいるのに、なぜかこんなに強烈な性格をしているクレオパトラを「ローマに連れて行く」と言ってしまうところとか、喜劇の極みだなぁ、まるでダンテの『神曲』みたいだなぁって、笑いながら見てしまった。
こんなハッピーエンドの作り方アリなのかと、思わずニコニコしてしまうのは、この映画くらいだろう!
歴史を変えた女性の歴史を変えて、大団円、見てる人を笑わせるんだから、神映画そのものだ。
理由は単純、普通だったら、「本当の恋を目の前にしたら、逃げることしかできないのが恋だから」だ。
僕はできれば、ほんとに好きなひとから逃げたくないけど。
了
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