南野 尚紀
人はなぜ歴史にこだわるんだろう? 今は目の前になく、すでに存在してないものなのに。それは前世の自分に美学を教わるためであり、後世にその美学と自分が達した美学を伝えるためなんだろう。運命の関係者。それらを理解するためにも歴史はあるし、それを理解できないなら歴史は意味がない。なぜあの時、あんなふうになったのかと人間は後悔するけど、その答えはたいてい歴史が教えてくれる。歴史は過去ではなく、今と少しだけの未来を知るためにある。比喩で誤魔化されないために、理論はあるし、迫り来る悪の過去に誤魔化されないために歴史はある。だからほんとに大切なのは、今を判断するための歴史と、それに対する時間の論述なのだろう。
歴史がただ過去を知りたいがためにあるとすれば、現在を生きている自分たちには何も意味はないのはハッキリしてて、それは死んだ哲学を学んでることになる。
悪の使者は、個人であれ、大きな歴史であれ、人の中にある悪い歴史を押し付けてくるし、それは過去のための歴史だ。だからこそ、それが悪の使者を見分けるための道具になるし、悪の使者には美の歴史を伝えるべきなのだろう。
僕には美は絶対のように思える。
正義は美しさを含んでいるが、美がないと、やはり悪や、心と容姿が醜い人間に対する説得力にも欠けるし、正義の正統性にも欠ける。
僕が憎んだ表面だけの美。悪の使者の奴隷を許してはいけない。
運命というのは、的確に美人を見分け、関わり合いになりたいと思う相手を、運命の糸を辿って自分で選ぶことでもある。
僕の場合は、何人もそういう人がいて、その代表格が知り合いの仁美さんと、ZARD坂井泉水と、ダンテだ。
僕は知り合いの仁美さんに似た人結婚したい。
なぜから、彼女は結婚してるから。
もしかしたら、ダンテが一体になりたいと望んで、一体になれなかった女性かもしれないし、僕は一体になっても構わない女性だと僕は思うから。
天国までよじ登って、あの人に会いに行く。
天国のバルはもう夜の11時半。
それでも彼女は飲み続けて、僕を待ってくれている。
凡人の僕が、哲学の道をよじ登って、たどり着いたバルだって彼女は気づいてるかなぁ。
僕は彼女の前に現れて、アペロスピリッツを注文する。
ちょうどバルには、「Fly me to the moon」が流れている。
詩人はよく、たくさんの言葉を使って、あなたが好きだという単純なことを言おうとする。これ、「Fly me to the moon」の歌詞なんだけどバカげてるって思う? バカげたことかもしれないけど、僕もあなたと天国で会って結婚するためだけに、エッセイを書いてるよ。今はしがない物書きだけど、絶対にすばらしい物書きになってみせるから、見てて。
もう一杯、もう一杯と、杯を重ねているうちにふたりの話は弾む。
「ダンテはマジメだよ。歴史ばっかり追って。まぁそれがいいんだけど」
「尚紀さんのいう歴史ってなんなの?」
「ん? 人を見る目のための知識。人物評」
「私のありのままも見てほしい。いい部分だけじゃなくて」
これは僕が結婚寸前まで行った彼女に似た人でもいいから、また会って結婚したい。
月の言葉を今の言葉に翻訳するのは難しい。
月はあまりにも美しく遠いから。
それでも、書くのがしがない物書き。
了
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