南野 尚紀
世の中の幸福の総量がゼロサムゲームになってるという話に、この頃すごく興味があるんだけど、実際にそんなことはわかりえないから、自分の人生単位のこととか、自分のいいと思う人や、その人との関係性の中でよくそのことについて考えることがある。
ゼロサムゲームの価値基準は、人と状況によるからあいまいだけど、そんな哲学めいたことを考えて、手に取った映画がまた哲学めいているというのは哲学の量のゼロサムゲームと関係あるのかとか、そんなことも気楽に考えて、映画を見終えた。
『Boccacio70』というオムニバス映画のフェデリコ・フェリーニ監督の回、「アントニオ博士の誘惑」だ。
あらすじを言えば単純で、アントニオという博士が都市のエロを徹底的に批判するんだけど、逆にそのエロに取り憑かれるようになるという話で、アントニオ博士は街にできた看板のアニタ・エグバーグというセクシーな美女と葛藤することになる。
最後は注射を打って終わりなのだけど、いい映画だと思った。
何がいいかというと、美人との関わり合いの中で、時々、願いや思いと逆のことが起こるということで、アントニオ博士のマンションの前に建てられた看板のキャッチコピーは「ミルクを飲みましょう」だった。
つまり、アントニオ博士は大人になることと、女性に甘えるということへの拒否感が強くあったがために、逆のことに見舞われたということで、しかし最後、その気持ちが逆転し、アニタ・エグバーグという美女を助けようと戦うというシーンに変わるところは悲しくも見事だ。
映画ファンにも小粋なサービス、セットを作る人や、小道具さんなども気を遣って、映してあげるし、フェリーニってやっぱり天才だなぁ笑
仲間は大切だし、支えてくれてる人ありきの映画なんだから、スペシャルサンクスじゃないけど、ああいうのは最高だよね。
僕もこの頃、結婚願望のみならず、仕事ともっと大人にならないとなぁという強い意志が働きすぎて、いろんなことがあったのかなぁって思ってる。
もちろん、今、シエナの病院に入院しているその病気の原因かはわからないけど、最近は、悪いイメージが浮かんできても、あんまり戦わないで、受け流して、そのまま受け入れることにしてるし、でもやっぱり拒否すべきなのか、こういう不愉快なイメージはどう対処すべきかのなぞは深い。
ただ大切なことは、お酒を飲みすぎて吐きたい人に、吐きたいだけ吐かせてあげるのを止めるのはむしろ不健康だというあれと、この問題は似ている気がする。
人生には自分の中に溜まった悪いイメージを、吐き出すタイミングが必要なのかもしれない。
僕もキレイな女性に甘えたいっていう願望を押し殺してまで、大人になろうとしてたから、これからはあんまりその感情を押し殺すのはやめて、安らかにしてあげようと思ったり、恥ずかしいからやっぱりもう少し抑えたりしてみようかなぁと、思ってますよ笑
了
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