南野 尚紀
フィレンツェにいるとすごく思うんだけど、やっぱりボッティチェリ、ダンテ、イレーネ・バリェッホにかなうひとっていないなってことで、それでも夜中の時間と、朝の時間使って、Laura Pausiniラウラ・パウジーニの「La Solitudine」を翻訳したら、ボッティチェリと同じくらい、いいって感じがした。
「La Solitudine」は孤独って意味で、スペイン語、イタリア語、英語と3パターンある。
その中でも、僕がイチオシなのは英語で書かれたリリックで、イタリアンシネマ『踊れ、トスカーナ』みたいにロマンティックだ。
まず最初に、スペイン語のリリックを日本語に僕が意訳したものをここに載せるので、ぜひ読んでほしい。
マルコ、あなたはもう戻ってこないんだね
朝のメトロは、彼なしでたどり着くし
そのハートはメタルソウルと一緒にありつづける
灰色の旗は街中にあるし
いつもすわってるベンチはむなしいから、マルコ
一緒にいよう
私は彼の息も感じられるし
彼がまだここにいるっても思える
遠すぎる距離もふたりを離ればなれにさせない
ふたつの心とひとつの心
あなたが私のこと思ってくれたら、少しはなにかあるかも!
もしなにも話したい気分じゃなかったり
好きだってこと隠してても
あなたがすべてから逃げて、あなたが離れてっても
ディナーなしで寝るのが寂しくても
あなたが自分を強く責めても
あなたが枕をぬらすくらい泣いても
どんなに悪いかあなたが知らなくても
それはあなたを寂しくするから
私が撮ったあなたの写真、日記に貼ってあるよ
まぶしいシャイボーイの目
私は胸に押しつけてるよ、あなたの写真を私だと思って
あなたはここにいても、英語と数学のことばっかり考えてる
あなたのお父さんとお父さんのアドバイスが色あせても
仕事とつまんない他の理由で
お父さんはあなたをあなたのことなんか気にせず、遠くへ連れてった
「いつかお前にもわかるよ」っていって
私のこと考えてもいいかも
本当の友だちと
忘れよう
それは大変なことだし、事実でもある
教室で、私がそのことどうにかできてれば
あなたにとって午後は最悪なんだろうし
私の勉強嫌いも
あなたのためだから、私の考えは飛んでる
これは好きだから、離れるのは不可能!
生活ももちろん大切だけど
結論! 私のために待って
私の日記のために
幻想を続けて
その2つのあいだの孤独
沈黙は私の心の中に
絶え間ない視線はあなたの愛なしの人生を呼び起こす
だから私のこと待とう
理由は
あなたを恋愛から離れられないようにするためってことで
ふたつのストーリー
孤独
Laura Pausini “La Solitudine” Spanish
このリリック、たぶん、女の子が地下鉄で降りる駅に着くまでに考えたことなんじゃないかって思うけど、すごくやさしくてステキだなぁって思う。
灰色の旗、「divini」(=離れる)は、ダンテの地獄編で、ある人々が灰色の旗を追いかけ続けてるから、地獄にも入れないでずっとむなしい場所をさまよってるっていう場面を思い出すし、「La divina Commedia」の「神聖な」と「離れる」が重なってるのも、パオロとフランチェスカについての関係が深い男女が一体になる罪について書かれてるシーンを思い出す。
あなたの写真を私だと思って抱きしめるも、イタリアの作家・アントニオ・タブッキの「逆さまゲーム」、スペインに住んでた元カノの葬式に出る小説なんだけど、「今夜、あなたはあなたのこと、私だと思って抱きしめて。私も私のこと、あなただと思って抱きしめるから」っていうシーンがあって、知り合いの男にあなたの知ってる彼女のことは図書館の中で作った彼女の話で、実際には他の側面があるっていわれるシーンを思わせるのもいい。
でも現実には、本当に正しい仕事をしようってなったら、勉強が嫌いとかいってらんないし、文化の仕事やるってなったら、理念のこと考えると、世界史でもっとも美しいボッティチェリのこととか、彼の描いたヴィーナスのこと考えることにはなるけど。
少なくとも僕のファンは、女性の味方をする女性多いし、本当に若くてキレイな女性は、重要な結論しかいわないから、それだと正しい仕事にはならないっていう話もある。
マルコはどっかに行ったし、もう戻ってこない
7時半のメトロにも彼はいないし
魂のないメタルのハートと
冷めたグレーの朝の街
学校の机はむなしい感じがするから
マルコのことをいつも想ってる
彼のこと、考えるとき
あまい息も思い出せるし
他人みたいに遠ざけるしぐさ
なんか離ればなれみたいで
でもなぜか胸が高なって
私を強くする
あなたが私のことを思ってくれるか気になってる
もしあなたが親にいえないことがあったら
もしあなたが私のこと好きだってこと隠したら
あなたは人目を避けるために
どこかへ行くでしょ
あなたの部屋、みたし
なにも食べたくないみたいだったし
あなたはあなたのこと抱きしめるみたいに枕を抱いてたし
あなた、泣いてたけど、それにも気づかない
ひとりでいることがどれくらいあなたの心を蝕んでるかも
マルコ、日記に写真貼ってあるし、いっつも持ち歩いてるよ
シャイな子どもみたいに静かな瞳
英語と数学の宿題やってるときもずっと
あなたがそこにいるって感じがするし
そんな気持ち大切にするから
あなたのお父さん、アドバイスくれたでしょ
記憶が色褪せても
仕事しながらあなたをいろんなとこに連れてって
あなたの意見にハッキリなにかいわなくても
「いつか俺のことわかるよ」っていってたよね
あなたが私のこと思ってくれるかどうか心配で
もしあなたが友だちと楽しくおしゃべりしてるのをみれば
私の辛さもすぐにどっかいくのに
でもそれがうまくいかないってことも
あなたは知ってる
私は学校にいるのもイヤになるくらい
あなたのいない放課後の午後とか
勉強したことは役に立たない
思いついたアイディアがあなたへの思いひっかくみたいで
これって私たち2人の人生から切り離せないよね
だから私のために待ち続けて、私が好きだっていうまで
それに私もあなたがどんなバカやってくれるかなんてわかんないし
私たちのあいだに横たわる孤独
私の心の沈黙
あなたがないときに感じる人生の不安
なんで私のために待ってほしいかっていうのは
あなたなしで生きていくのはムリだから
これは私たち2人の物語から切り離すことなんてできないよね
私たち2人の孤独は
私の中の静けさ
あなたなしで人生を生きる不安
なんで私のために待ってほしいかって
あなたのいない人生なんて考えられない
なんでなんてわからないけどこれって私たち2人の物語につき待とうよね
それはいつも孤独
Laura Pausini “La Solitudine” Italian
イタリア語のバージョンは、ピアノで不協和音と心音に近い音のリズムの繰り返しが使われてて、不協和音は協和音、つまり汚い音とキレイな音のギャップを出してキレイな音をキレイに聴かせるためにジャズの世界ではよく使われる。
心音に近いリズムの音の繰り返しは、ひとがいちばん安心する音とされてるけど、そこがスペイン語と英語のバージョンと、イタリア語のバージョンで違う。
リリックは、理系の文化を押し通す女性をリケ女って、今でもたまに呼ぶときがあるけど、そういう男の子と、明るい女性の友情の歌、みたいな感じがする。
昔、フレディー・マーキュリーっていう、バンドのボーカルが、イタリアとイギリスで表裏になってる旗もってステージで走り回ったり、詳細は忘れたけど、SNSで日本在住の日本人のロックバンドの歌手が「俺はローマ人だから」って投稿してたりしてたけど、ずいぶん僕とは違うイタリアのイメージをもってるひとがいるんだなぁって驚いた記憶があった。
僕は宇都宮市っていう日本で魅力度ランキング最下位になったことのある県の街に住んでたことがあって、地方すぎてそういう文化なかったけど、イタリア人への憧れが強烈だとああいう表現をしたくなるのかもなぁとかは思う。
僕はイタリアの国籍取る予定だから、イタリア人になるかもしれないし、スペインの方が好きだけど笑
彼は私のこと考えてくれてるかな
あるとき、彼は退屈という名の忘れられない電車に乗った
私は彼がヒマつぶしをしたのを想像する
冷めたグレーの朝
雨が降ってる街を通りすぎて
だれかのことを考えてると
彼に走り寄ってくるひとが
そのひとは彼に告げる
「今、私に会いたいって顔してなかった?」
彼は笑いながら
「そりゃもう」
っていって
おもしろい女の子に出会う
でもちょうど夏だから
彼はもう2度と会えないって直感する
神さま
なにかの間違いでありますように
それでもなぜか強くそう思ってない自分がいる
調子がよかったり、よくなかったり、悲しかったり、しあわせだったり
気分がよかったり、よくなかったり
若すぎたり、お年寄りみたいだったり、笑ったり、泣いたり
本当のことをいったのに、それがウソになったり
それでも心も振る舞いも強く保ったし
善の心をもってたから
純粋だったから
いろんなものを汚したこともあった
孤独
あの言葉は口にするものイヤだ
そしてノーといおう
私が私たちのしたことに対してやったことはおかしくなかったし
私はもう少しだけおかしくなっても大丈夫
だから彼にも私のこともう少し見通してほしい
彼は真剣に私を愛したけど
私は満たされなかった
そして私は部屋にもどったけど
彼はいいことを知ってた
彼が動いて私がゆっくりしたらって感じがして
それを彼に話したら、彼は私の一部になった
そして、私は彼が絶対この夏を永遠にするって知ってる
神さま
私は正しくなりたい
戦いもせず、与えることは不可能だから
私は言葉を人々に投げかけられるし
理解し合えない人々は私に言葉を投げるけど
人々はすべてのひとが
少しのものしかもってないことも知ることができない
もっといえば、生きてるうちにそのことも明るみに出るんだろう
なんで私は独身生活なんてしちゃったのかな
それでも、私が支払うべきなのは孤独で
それこそが価値を決めた
その孤独は私がアパートで流した涙で
その涙が私の気分を浮き沈みさせたし
私の心にまとわりついた
孤独
私にいったこと、彼は覚えてるかな
調子がよかったり、よくなかったり、悲しかったり、しあわせだったり
気分がよかったり、よくなかったり
若すぎたり、お年寄りみたいだったり、笑ったり、泣いたり
本当のことをいったのに、それがウソになったり
それでも心も振る舞いも強く保ったし
正義の心がもってたから
罪がなかったから
あらゆるものを汚した
孤独
あの言葉は口にするものイヤだ
Laura Pausini “La Solitudine” English
ラブソングのいいところは、理想の結婚に向かわせてくれる力とか、恋愛のムードを盛り上げてくれるところにあると僕は思う。
しかもこのナンバーは、理想の結婚に向かうとき、いろんなハードルを越えなくちゃいけないとか、ロマンティックなムードが大切だってことはあるから、そういう意味でも、男女を勇気づける歌だなと。
ディズニーアニメ『白雪姫』、ダンテ『神曲』はいい作品だと思う。
『白雪姫』は現代の設定の話じゃないから、30すぎた男女がストレートにあのイメージを浮かべながら恋愛はさすがに厳しい。
ダンテ『神曲』は、途中で罪人と対話しなくなったことが天国への架け橋になってるって、解説者が書いてたけど、トランプみても、石原慎太郎みても、メローニみても、現実的に罪を抱えてるひとのこと、もっといえば、ふつうのひとのなかに罪深い考え方をもってるひとを100パーセント無視するってできるのかっていう問題がある。
実際、ダンテも含め、それをする時間がほとんどなくなるってだけで、100パーセントそれをなくすってことは、理想を叶えようとするほど、逆に難しいんだろう。
実際に一般人が、キレイな有名人の女性との理想の結婚を叶えようってなった場合、ファンからの嫉妬心ってあるから、もっと大変だ。
「正義の心がもってたから 罪がなかったから あらゆるものを汚した」、ここが好きで、罪がないひとほど冤罪の自白をさせるための圧力があったりするし、それを守るためには精神的な戦い、言葉の戦いはやはりつきものなんだろう。
ダンテは自己定義、つまり自分がどういう人間かっていう問いはずっと続けたんだけど、そうなると比較になるから、社格を決めるときと同じで、あのひとはだれなんだろうってことを問うことになる。
スペインの作家・Irene Vallejoイレーネ・バリェッホとか、ZARDの坂井泉水とか、ボッティチェリは天才だから、その詳細を書いてるんだけど、詳細って書きすぎると恋愛のムード台無しにしかねないからなぁ、それでも僕は彼ら天才だと思うからあのひとたちの作品みるけど。
世の中いいひとたくさんいるけど、Laura Pausiniはかなり好きだなぁ。
リリックはかわいいけど、歌声はかっこよくて。
僕もイタリアでの理想の結婚に向けて、仕事もがんばってるし、恋愛ももっとちゃんとしたいから、そういう意味ですごく希望がもててよかった笑
了
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