南野 尚紀
0. イントロデュース
もしあなたが村上春樹をよく知っているひとや文学が大好きなひとだったら、5.結論までは読み飛ばしてください。南欧美学エッセイに書かれたものに比べればつたないものですが、笑えるという意味では少しあなたのお役に立てるかもしれないので。
村上春樹の小説は、19歳の頃から読んでいて、青春期が過ぎても、時々、読み返したくなる作品ばかりだ。読んでて気分が晴れやかになる作品という意味で、ほんとに心の安定、安心に一役買った作家なのだろう。
彼が書いた小説は賛否両論あるし、賛否両論あるってことはそれだけ、影響力がある証拠だ。
タイトルにもある通り、比喩と構造を知るってことは、懸命にいい仕事をしようとするほど、大人になってからも必要になることがある。
もちろん本人がよりよい結婚を目指す場合、喜劇について考えることはいいことだと思うし。
1.作者紹介
一九四九年京都生まれ、兵庫出身。早稲田大学卒業後、東京の国立でジャズ喫茶「ピーターキャット」を経営する。一九七九年、初めて書いた中編小説『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞。一九八二年、『羊をめぐる冒険』で野間新人文学賞を受賞。その後も数々の賞を受賞し、二〇〇六年にはフランツ・カフカ賞も受賞。
代表作に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『騎士団長殺し』がある。
海外移住や旅行経験も豊富で、英語が堪能。翻訳者としても有名で、多くのアメリカ文学の小説を日本語に翻訳している。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を敢えて、英語名の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と翻訳し、タイトルをつけたことは、文学の世界では有名。
初めて書いた小説、『風の歌を聴け』は一度、新しい文体や雰囲気を発見するために、英語で書いた文章を日本語に訳して、賞に投稿した。
2.あらすじ
大学生の「僕」は夏休みのあいだ、港町にある故郷に帰り、地元にいる鼠という友達とジェイズ・バーというバーでお酒を飲んで、世の中のことについて話しながら、日々を過ごしている。
「僕」は3人の女性と付き合うが、3人とも結婚することなく、死んでしまった。ラジオを聴きながら、ビール、ピーナッツを食べて過ごす「僕」だったが、彼は結果として心の中の葛藤を抱えたまま、一時的な解決案を見つけて、都会に戻っていく(続編があるので、決定的な解決案はみつけてないことがわかる)。
3.本論
僕がこの小説が好きな理由は、文学の世界に涼しい風を通すかのように、文学の重苦しい雰囲気を変えたことで、村上春樹の文体はほんとにおしゃれで読んでて心地いい。
『風の歌を聴け』の冒頭箇所にもあるように、あなたがほんとの芸術や文学を求めるなら、ギリシャ人が書いたものを読めばいいし、夜中の三時に冷蔵庫を漁るような凡庸な人間には、たいした文章は書けないって書いてて、村上春樹が追いかけたのは、スコット・フィッツジェラルドのような1930年代前後のアメリカ文学の雰囲気と、古代ギリシャだったんだろう。
文章を書く作業は身のまわりの物事との距離も物差しで測るようなもんだっていうことも書いてるし、実際、当時流行ってた、ポストモダン文学っていうのは、比喩、つまり、登場人物の女性が白い表紙の本を読んでるってことは、なにか作者のメッセージがそこに込められているんだろうし、それを考えるのは個人の自由なんだろうっていう、表現の自由を求める表現だったのかもしれない。
村上春樹は、世の中を知るための知恵を人に与えてくれる素晴らしい作家だ。
少なくとも、村上春樹のファンは世界中にいるから、そのあたたかい読者たちは、彼の本を読むことで、静かな休日を過ごすことができているだろうし。
4. 結論
『風の歌を聴け』の中には、お酒飲ませて酔っ払って意識がない女性と寝るなんて最低だって女性が主人公に怒るシーンがあって、本当に最低だなって思った読者もいるかもしれないし、「宇宙が進化し続けるのは方向性、指向性、エネルギーが関係してる」って話を女性とするシーンがあるんだけど、「私は死んで100年もたてば、だれも私の存在なんて覚えてない」って女性がいってるのに、「みんな覚えてるんじゃないかなぁ、エネルギーってそもそも人の心の美しさからくるものだと僕は思うし」、とかそんな冗談、いえば女性もよろこんだかもなぁって思う読者もきっといただろうし、読む人が読めば、いろんな感想が心に浮かぶかもしれないなと。
『海辺のカフカ』も同時多発テロを小説内で止めた小説っていわれてたし、村上春樹の小説、エッセイは深みがある作品が数多くある。特にエッセイは、気楽に読めるものもたくさんあるので、文学に詳しくなくても楽しめるし。
とにかく比喩を巧みに使って、世の中の仕組みを表現するのが上手な作家だから、心から尊敬してます。
5.参考文献
村上春樹 『風の歌を聴け』 講談社文庫
了
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