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映画バカ一代 第7夜 ヴィットーリオ・デ・シーカ『女と女と女たち』をみて思った、恋の情熱の話――

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 南野 尚紀  

 仕事で疲れ果ててたから、たまには湘南のホテルでゆっくり海眺めながら仕事したいってことで、海を眺めてゆるゆる過ごしたあと、夜、シャンパンをルームサービスで頼んだで、飲んだ勢い、ずっと観たかったヴィットーリオ・デ・シーカの映画『女と女と女たち』っていう映画を観た。

 イタリアの映画監督が撮ったこの映画は、オムニバス構成になってて、話の冒頭、女性の名前がサブタイトルで出てきて、終わったら次、終わったら次って感じで、いろんな女性と男性の恋愛、って言っていいのか、とにかく男女模様が描かれるんだけど、最終章は本来だったら筆舌に尽くし難いくらいの最高な話になってる。

 と言っても、ここは一つ、私は、文学やってる人間の端くれでもあるから、度胸でもって、筆舌に尽くしてみることにする。

 この映画の最終章は、女性が二人出てきて、男性がどっちの女性になびくか、賭けようって内容で、人生紆余曲折あったらしく、素寒貧になってコーヒー代もままならない詩人の男が、冬の街を彷徨うんだけど、最後には豹柄のコートの気の強い女性か、気の弱そうな白いボアの上着を着た女性かのどっちかを選ぶ。結末は、ぜひ観てほしいから、ネタバレは避けとくけど。

 この映画の教訓っていうのは、数え切れないくらいある。でもとどのつまり言いたいのは、内面の美を愛し過ぎれば過ぎるほど、外面の美に惹かれてくってことなんだろう。

 映画の中の詩人っていうのは、ほとんど個人的な情報が開示されないから、どんな人間かっていうのかをわかるための人となりをわかるのに限界がある。それでもさ、なんだかあの男の詩人の気持ちが手に取るようにわかって、悲しいような、幸せなような複雑な気分になる。

 俺も一応、人生賭けて文学やったからな。

 芸術っていうのはさ、そこに内包される美学の議論のレベルがいかに高くて、いかに情熱的かっていうのは、言うまでもなく重要なんだけど、結局はどんなに御託並べて真面目にやっても、「幸福になるか、幸福にさせるか」の関係性っていうのは絶対拭えない。だからこそなんだけど、唯一、気になってるのは、詩人の男が女性との関係の中で自分の幸福を得たかってことだ。

 あの男は見るからに優しそうだったから、女性に優しくしすぎそうな感じがして、そこがどうも危なっかしい。

 古今東西、詩人は同じだとは言わない。

 それでも、いい詩人ほど、情熱に燃えて、燃えて、飽くなき決闘を重ね、時に美を知り、内面の美を磨くんだけど、それはどこにも届くことがなくて、最後の最後、現実でも、作品内でも、それを一部でも受け入れてくれる美しい女性がいてくれるかどうかだけが大切だ。

 美を追求するんだったら、情熱の火を燃やしてる時とか、幸福な時こそ、かっこよくなきゃいけないから。

 だからポータルサイトやってるってわけじゃないけど、詩人の情熱を少しでもサポートできたらなと心から祈ってる。

 もっともかく言う俺も文学好きだったから、文学の仕事もやるってんで、努力してんだけど。

 そんなことはもうどうでもよくて、私は私の内面を多少でもみてくれる素敵な女性を、フリーキックで的確に相手のゴールを刺すように、幸せを与えて、幸せを得たいなと思う。

了 

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