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モデルを信じ抜くことの美学Ⅱ――「逆境に手を合わせなさい」という稲盛和夫先生の言葉を熟考し、結果、精神美のモデル・中上健次と坂井泉水、果ては、信じるものを1つにする女性について考えた夜のこと――

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南野 一紀 

 「逆境に手を合わせなさい」というのは、京セラの元会長・稲盛和夫先生のありがたきお言葉、僕も文学教室だけじゃない、今後、会社を経営する人間になるから、この頃はその意味するところについてよく考えているんだけど、これは石原慎太郎先生の著書『太陽の季節』の冒頭、主人公が英子という女性を愛する時の感覚は、一種、ボクシングでリングの際に追い込まれる時の快感に似ていたと書いているが、あれと似ているような気がする。

 どんなに疲れを溜めないように工夫して仕事しても、疲れ果てて動くことすらでないという日は僕にだってあるし、そんな時は良くない考え方やイメージが浮かびがちだけど、そういう時にこそ、人間の真価っていうのは問われるんじゃないかなぁ。

 ユダヤ教やキリスト教だけじゃなく、ロマン主義など世界で尊ばれている思想の多くには、普通の人間には想像することもできない苦難の歴史というのが必ずあると言われている。

 これは僕の憶測だけど、逆境や苦難に遭った時、理念、そして信仰の対象を揺らがせるようなものっていうのは、絶えず襲ってくるもんで、すり替えられないように、曲げないように、その信念の強さをより強いものにするためにそういう時間っていうのはあるんだろうと思ってる。

 結局、人生の途上、何かの理由で最高の仕事や結婚をあきらめてしまう人っていうのは、これがダメな人間である気がしている。

 それこそ英子じゃないけど、それ以外の女性の誘惑、それよりも恐ろしいのは「現実」という名の誘惑なんだろう。

 「現実」は確かに重要なことだし、仕事する上で目先の利益をまったく追求しないということは基本的にできない。

 そうであるが故に、一流でない人間の多くは「現実」という言葉の持つ恫喝能力にいつしか屈して、理念やモデルとなる女性への念を捻じ曲げてしまう。

 己が美学のなんたるかを世に通す気概があるのであれば、現実も含めたさまざまな逆境と戦わなくてはいけない。

 以前、エッセイにも書いたけど、僕は中上健次先生と坂井泉水先生が好きで、作品に触れるたび、こんな大文豪は他に見たことがないなと思わず感嘆してしまうんだけど、悲しいかな、モデルっていうのは結婚の対象ではない。

  •  中上健次先生も坂井泉水先生も、すでにお亡くなりになられているし。

 だから、その信仰を一つにしてくれるキレイな女性としか結婚しないと意を決することにした。ダンテの名言にもあるように、「意を決し、願わない想いこそが叶う」という法則もどうもあるような気がしているから。その想いから少し離れた途端、何かの拍子に願いが叶うということもなきにしもあらずだけど。離れてみた時の絵画だって、猫だってそんなもんだ。

#イタリア #エッセイ #モデル #稲盛和夫 #美学 #哲学 #坂井泉水 #ZARD  #石原慎太郎 

#中上健次 #文学 #南欧美学

了 

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